携帯獣(NL)−ブック
□線香花火/お花見
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【線香花火】
「線香花火と言えば」
黙々と花火をしていた時、ふいにレッドが口を開いた。エリカは視線だけをレッドの方に向ける。
「昔、グリーンにどっちが長く持つか勝負しようぜ、って言われた……」
「ああ、よく聞くあれですね。どちらが勝ったんです?」
「引き分け、ってグリーンは言ってたけど。俺……興味なかったから」
「レッドさんらしいですね」
クスクスとエリカは笑う。その小さな振動で、エリカの線香花火が地面に吸い込まれていった。
「終わってしまいました。もう少し楽しみたかったんですけど」
「ん、じゃあこれ持てばいい」
そう言ってレッドは自分の線香花火を差し出す。エリカは朗らかに笑った。
「では、失礼いたします」
線香花火ではなく、線香花火を持つ手に手を重ねたエリカにレッドはちょっと驚いたようにして、けれどなにも言うことなく、花火が燃え尽きるのをただ静かに待っていた。