携帯獣(NL)−ブック

□怖がる君の手を握った、僕の下心を君は知らない
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「ほ、本当に入るの?」


ところは遊園地。お化け屋敷の前。本日三回目の問いかけをナタネはマツバに投げる。彼は満面の笑みを彼女に向けた。


「入るよ。ナタネが気になるっていったんじゃないか」

「たしかに気になるとは言ったけど、入りたいとは言ってないよぉ」

「なに? 怖いの」

「ち、違うよ! 怖くないよ!!」


バレバレの嘘。うまく誤魔化せているとナタネはいまだに思っている。怖いなら素直に認めればいいのに、強がるところがマツバからすれば可愛かった。


「じゃあいいじゃない。入ろうよ。こういうところ、僕も好きなんだ。ほら、いろいろなものがみえるし……ね?」

「い、いろいろなものってなに!?」

「ゴーストポケモンに似せて作った置物の横にいる、本物のゴーストポケモンとか」

「あ……ポケモン、ポケモンね、それなら……」

「そうじゃないものもいるけど」


にこやかに紡がれた言葉にナタネが青ざめる。気付かれないように笑ったマツバは彼女の手を握った。


「こうしてれば安心、でしょ」

「そりゃ少しは……って、怖くない! 怖くないからね!?」

「わかってるよ。ナタネは暗い所が少し苦手なんだよね。鳥目とか?」

「そう、そうなの! 目が慣れるまで、いや慣れても不安で」

「やっぱり。じゃあこのままね」


うん、とナタネが頷く。いよいよお化け屋敷の中に入った。手が少し震えている。彼女はマツバの近くに身を寄せた。彼は握る手に力を込める。ありがとう、と呟くナタネはマツバの隠された下心をまだ知らない。
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