その他(ポケレン/ポケダン/アニメ/2003 他)−ブック

□言葉に頼るな行動で示せ
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「なぁ、リズミ、どうすればいいと思う?」

「なにをどうしたいのか言ってくれなきゃ答えられないわよ」


しょぼくれた顔で相談にやってきた長年の友にさらっと言葉を返す。とは言え、だいたいの予測はついていた。おそらく、ヒトミのことだろう。レンジャーではない私に相談することと言ったら、それぐらいしか思いつかない。


「この前さ、思い切ってヒトミに好きだって言ったんだ」

「え!? 嘘でしょ!?」


思わず立ち上がる。……しかし、それで悩むということはふられた、ということだろうか。それはおかしい。私が見たところヒトミもダズルが好きみたいなのに。


「嘘じゃない。でさ、その返事が『私も好きだよ。大切な友達だもん』だったんだ。どうしたら伝わるのかなぁと思ってさ」

「あ、ああ、そういうことなの。なんて言葉をかければいいのか一瞬悩んだじゃない。……そうねぇ、てっとりばやく行動で示せばいいと思うけど」

「……えっ」

「言っとくけど、いかがわしい意味じゃないからね。手をぎゅっと握ってみるとかさ。あの子、レンジャーの仕事となるとそんなことないのに、私生活では行動が伴わないとうまく理解しきれないところがあるからね。ただ好きって伝えるだけじゃ分からないのよ」

「そっか……そうかもな、よし!」


グッとダズルが両拳を握る。切り替えの早い男だ。それがいいとことでもあるのだが。
いったい何をするつもりなのか聞こうとしたら、ちょうどヒトミが帰ってきた。どこかでもらったのか、パートナーのパチリスが首に赤いリボンを結んでいる。
可愛いなぁなんて思っていたら、隣にいたダズルが突然ヒトミのほうに走りだした。声をかける間もないスピードで彼女の方に向かい、前に立ちふさがると同時にヒトミの身体を抱きしめた。さすがにそれはまずいんじゃないだろうか。


「えっ、えっ、なに、どうしたの、ダズルくん!?」

「俺、ヒトミが好きだ!!」


それはもうフロアじゅうに聞こえそうな声で、愛の告白。みんなが手をとめて二人に注目している。ヒトミの足元にいるパチリスは驚いて腰を抜かしたようで、地面にペタンと座っていた。


「……ごめん」

「え!? ダ、ダメなのか!?」

「あっ、ううん。そうじゃなくて、えっと好きって恋の意味で、なんだよね」


今回はきちんと伝わったみたいだ。よかった。にしても抱きつかれてることとか、公衆の面前での告白に対してなにか言うことはないのだろうか。……ああ、あの子はちょっと他人と感覚が違うからなにも疑問に感じていないのかもしれない。


「だとしたらこの前のあれもそうだったのかなって……私、返事の仕方間違えたよね」

「ああ、ちょっと悩んだ。……って、それはいいからさ、改めて返事」

「……うん。私もダズルくん好きだよ。だから嬉しい」

「ほ、本当に?」


ほんのり赤い顔で頷くヒトミに、ダズルはガッツポーズでよっしゃあ! と叫んだ。緊張感もへったくれもないな、と思わず思う。いや、喜ぶのは分かるんだけどさ。もっとこう、なんかないのだろうか。ヒトミもヒトミでそんなあっさり。……いや、もういいや。突っ込むのはやめておこう。人それぞれと言われればそれまでだし、二人のことは大好きだから応援してるけど、必要以上の人の色恋沙汰に干渉したくないし。
そこで私は気持ちを切り替えて仕事に戻った。数秒後周りの視線に気づいて恥ずかしさから逃げ出す長年の共のまぬけな姿を頭の隅で想像しながら。
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