dream
□幼馴染み
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あいつの自室の側には大きな桜の木がある。
何の因果か、その木はあいつが六番隊に初めて来た日に埋められたらしい。
毎年花を咲かせるほどにまで育ったその桜を見る度に、まるであいつがどれほど隊長を想っているのか感じさせられる気がして、思わず苦笑する。
「‥恋次?」
「よお」
「また私を慰めにきてくれたの?」
「‥まあな」
毎晩のようにお前が泣いているその桜の下。
隊長を想って泣いてるんじゃないか、なんて胸が軋む音に気づかない振りをして今日もまた来ちまった。
そしたら案の定、お前は独りで膝を抱えて泣いていた。
「恋次は優しいね、こんな情けない幼馴染みなのにいつもこうやって側に居てくれて」
「優しくなんかねえし、情けなくなんかねえよ」
「ふふ、ありがとう」
赤く腫れてる目で優しく笑うその姿を見て軋んだ音には、気づかない振りができなかった。
なんでそんなに辛いのにお前は隊長しか見てねえんだよ。
お前がどんだけ毎日苦しんで泣いで目を腫らしても、隊長は一度として気づいたことさえないのに。
なのになんで、なんで諦めねえんだよ。
なんで俺じゃねえんだよ。
なんで、なんで隊長なんだよ。
俺ならお前の望むこと、なんだって聞いてやる。
幸せにだってしてやれるのによ‥。
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