運が良いのか悪いのか(甲)

□序章
そうだ、戦国に行こう
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薫に呼ばれて、二階のゲーム部屋に来てみたら、

「おー、ホントだ」

テレビ画面に『行きますか?』の文字と『はい』、『いいえ』の選択肢がでていた。
「何だろ、バグかな?どう思う?真姉」
「えー……バグにしてはおかしい気がするけど」
「ですよねー。カ○コンに問い合わせてみます?」
そう棗ちゃんが言った時、

「あっ!薫ちゃん!ゲームは一日一時間って言ったでしょう!?」
勢いよくゲーム部屋の扉を開けて入ってきたのは紫姉さんだった。

「なーに?薫姉、また怒られてるの?」
「あれ?薫姉ちゃん、棗先輩も……。まだゲームやってたんですか?」

紫姉さんのヒステリックとも言えるような声を聞いてきたのか、縁と都も来た。

「まあ、取りあえず、『はい』で」

カーソルを『はい』に合わせ、○ボタンを押す。


「え!?何してんの真姉ちゃん!?」
「そうだよ!データ消えるかもだよ!?」
「え?薫姉、そっちの心配?」
「私にはもう何が何だか……」
「あっれ?なんか画面おかしくないですか?」

棗ちゃんに言われて、もう一度画面を見る。

「な、な、なんじゃこりゃぁぁぁぁ!!」
さっきまで普通だった画面がぐにゃぐにゃと歪んで、何が映っているのかわからない状態になっていた。

「わっ、わたっ、私の一時間二十八分を返せぇぇぇ!!」

顔を真っ青にしてテレビに駆け寄った薫は、そう叫びながらべちんべちんとテレビを叩きはじめた。いや、テレビを叩いても無駄だと思う。
「あっ!やっぱり!三十分近く超過しているじゃないですか!」
「紫姉、それどころじゃないと思うよ……」




「い゛や゛ぁぁぁぁぁ!!画面消えたあ゛ぁぁぁ!!」
ついに真っ黒になってしまったテレビ画面を前に、薫は頭を抱えて悲鳴を上げた。薫……それ、人間の出す声じゃないよ……。

大袈裟に嘆く薫から、テレビに視線を移した時だった。

「……手?」

誰か、この怪現象を説明してくれ。
真っ黒なテレビ画面から、同じく真っ黒な手が何本も生えているんですが。……当たり前だけど、我が家のテレビに黒い手のオブジェなんてついていない。

と、その手が真の体をつかみ、

「なんっ…う、うぉぁ!!?」
テレビ画面の中に引きずり込んだ。



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