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□花火<君
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夏も終わりに近づく8月の暮れ。
この時期になると中学の近くで毎年花火大会が開かれる。
『柳生と行きたい』
そうねだったら二つ返事で引き受けてくれた。
何か意外じゃ。絶対勉強が云々言うて渋ると思ったんにのぅ。
柳生は基本的に俺に甘い。
友人関係だった時もだが、恋人となってからは尚更。
部活の時だって公私混同を嫌がる節のある奴らとは違って、それなりに優しく扱ってくれる。
嫌では無いが、時々むず痒い。
「仁王君、綿菓子は如何ですか?それともりんご飴の方がお好みですか?」
「そうじゃのー、どちらかと言えば焼きそばがええ。」
「選択肢にはありませんが…、分かりました。ではあそこで買いましょう。」
…でも時々俺が男だってこと、忘れとる気がするのは何でじゃろうな。
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