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□花火<君
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一瞬、恥ずかしい考えが頭を掠めたが嫌々と否定する。
そうだ、こいつは目を見て話したがるから。そのせいだ。
しかし、俺の思いは柳生の言葉によって花火と共に弾けた。
「貴方の髪が、光を反射してとても綺麗です。
貴方越しに見る花火の方が何倍も美しいなんて…、惚れた欲目でしょうかね。」
詩人の才のあるこいつにこういう言葉を考えさせたら駄目じゃ。
俺の心臓が持たん。
「あ、あほ!ちゃんと花火見んしゃい!」
「見てますよ」
顔が熱くなる。花火が隠してくれるといいが。
こいつは変な所で融通が効かん。
こうなったら終わりじゃと、俺は諦めて空を見上げた。
柳生はまだ、俺を見ている。
視線が痛いんじゃが…気になって花火に集中出来ん。
気になってちらっと柳生を伺う。
「綺麗ですね」
にっこりと最上級の笑顔でそう呟いた柳生の方が綺麗じゃなんて、思っちまった俺は頭がイかれたんかのぅ。
あぁ、これが惚れた欲目か。
そう考えたら何だか可笑しくて笑った。
そしたら柳生も笑った。
こういうのも、たまには悪くないか。
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