夢が集いし魔法の夜


章―
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 ――ふと、何かを忘れているような気がしたのは、魔術といった怪異に遭遇した次の日。

 つまりは、今日の朝。起床した時から。


 意味深な夢はいつまで経っても印象に残っているし、フィードバックするように“よくわからない光景”が目に浮かぶ。

 それが、自分から何かを思い出そうとしている感覚に近かったこともあり、妙に気になった。

 ――あ、なんか頭のこの辺にきてる……みたいな。


 そんなこんなで今日一日を過ごす内に、気づいたら。




 全部、思い出してしまった。




 それも二つ。


 まず一つは、昨日の朝のこと。


 珍しくも自分のクラスに編入してきた一人の女子生徒は昼の顔は仮面を被り、その裏では到底想像のつかないことをしていた。

 魔術師。全く思いもよらないその正体に、自分は「へー」だの「ほー」だの漏らしていた。


 さて、女子生徒を初めて見た時。


 『篠希クロナ』。


 その名前に、“全く聞き覚えがなかった”。

 偶然知り合った魔術師、という程度にしかその日はあまり深く考えなかった。


 しかし、それも今日思い出してしまう。


 まさかと、ただの妄想かもしれないと、一応裏付けのために友人へ電話で協力を頼んで調べてもらう。

 小学校の思い出の品――アルバムなどからある少女を探してもらったのだ。

 友人の桐宮アマタは、裏付けは正しかったと伝えた。




 ――――思い出した。……否、“わかってしまった”。




 自らが感じていた違和感、内心の何処にあるであろう思い出そうとする意思、フィードバックする光景。

 それらが何度も繰り返す内に、“何もかもが解けてしまった”。




 ――――自分の頭に、記憶に、二つの施錠があった。




 『真新しい物』と、『古い埃が被った物』。


 その『古い施錠』が解けるものだから、一緒に『新しい施錠』まで解けてしまったというわけだ。


 お陰で今は頭がスッキリしている。今日こそよく眠れそうだ。最近は寝不足だったので、これは幸いだ。






 東雲ユウキは、こうして“目が醒めた”。


 
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