夢が集いし魔法の夜
□―序章― part1
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信じるか
信じないかは
あなた次第
真昼はそれまた平凡で、深夜はそれでいて平凡で。
山々に囲まれた内陸に位置する街、園咲市は都会じみた田舎のようで何とも言えない“中間”の様相をしていた。
近年はビルが並び建つようになり、乗じて人並みはそれに吸い寄せられるかのごとく集まっていく。
つまりは、中央区に近いほど都会。遠いほど田舎というわけだ。
最も、だからと言って隅の地区などに差別意識を持った輩は極少数。
基本的に園咲市は、平凡であるがために変哲のない普通の街“だった”のだ。
――人知れず、夢の楽園へと飛び立つ人々。
母が子を寝つかせるように、どこからともなく聞こえてくる《コモリウタ》。それは、安らぎと幸福を錯覚する。
はたして長き眠りにつく時、見るのは悪夢か、それとも……。
――聳え立つ摩天楼の頂きに立つは、翼を生やした鳥人か。
星々が煌めく満天の夜空に、ビルの谷間を抜けて飛翔する一つの影。
《飛行少年》は背中の翼を棚引かせ、時折人前に降りては呑気に会話を繰り広げているとか。
この街に大多数の人間が集まった時、園咲市は変わった。
平凡で普通過ぎた退屈な街から――『都市伝説』という薬に染められた、刺激に満ち溢れた街へ。