暁光の名のもとに
□母と娘
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『もしもし。椎名です』
「あ、お母さん。美玖よ」
『あら、美玖。どう? 無事にあかつき屋に着いた?』
「いや着いてなかったら暢気に電話なんかしてないわよ。ていうか、無事にって……そんなに信用ない?」
『そんなことないわよ。……ただ下りる駅間違えたり、道に迷って変なところ行ってないかなって思っただけ』
「…………そ、そんなわけないじゃない! 私、方向音痴でもないし。って、やっぱり信用してないじゃない!」
『ごめんね。……ところで、あかつき屋はどう?』
「どうって、いいところじゃない。快適だし、奇麗だし。いざとなったら下の店に行けば料理も食べれるしね」
『まあ、確かにそうね。……ふふっ』
「そういえば、もうバイト決めちゃったのよ」
『あら、中々早かったわね。正直、凄いと思う』
「まあ、友達ができたからなんだけど。……あかつき屋の二階でね、アカツキっていう何でも屋みたいのがあったの」
『…………………………もしかして、そこに』
「うん。とりあえず入れさせてもらったのよ。まあ、仕事場体験お試し期間みたいな感じ」
『いやそうじゃなくてね。……もしかして、そこに…………そうね、城金君って子がいたりしない?』
「え? あ、うん。いるわね」
『そう!! やっぱり……。うんうん。』
「ど、どうしたの? 知り合い?」
『いや、何でもないわ』
「何でもないって何よ」
『さあ? ……こっちはね、父さんが反省してるわ』
「……じ、自業自得よ! 私何にも悪くないわ」
『クスクス……。まあ、とりあえず大事にはなってないから。安心して生活してなさい』
「うん。わかったわ」
『じゃあ。臣郎伯父さんによろしくね』
「うん。じゃあね」