暁光の名のもとに


□不幸連鎖の仕事日和
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「ねぇ、祐真!」

「何!?」

「アカツキって、こんな仕事ばっかなの!?」

「それについてはコメントしたくない! 何故なら俺自身納得したくない!!」

「中々ハードな仕事だっていうのはもう一瞬で身に染みたわよ!!」

今さらな質問をかけてくる美玖に祐真は首を横に振って答える。
走りながらのために息は絶え絶えで汗の滴も散っていた。

既に夜ながら、祐真と美玖は埠頭内を常時爆走していた。
港もあるため大小様々な船が停泊している。

現在は錆びが年季の深さを思わせる大きなコンテナが立ち並ぶ倉庫群の中を走り抜けていた。

その背後から、同じように追い掛けてきている集団がいる。
黒い衣服の上にこれまた黒いマントに黒い頭巾を被った者達が大勢、鬼気迫る表情で追尾してきていた。
いかにも、巷で囁かれる邪教衆の一派である。

「貴様らぁぁぁぁ! 我らが絶対にして唯一なる主神に捧げる生け贄を返せぇぇぇぇ!!!」

「なぁにが絶対にして唯一なる主神よ! どうせ髭ボーボーの王様みたいなじいさんなんでしょ!」

「違う!! 我らが主神はエプロンにスカートを穿いたピッチピチの女の子である!!!」

「「「「「我らが神に、萌えを捧げよ!」」」」」

「そんな神様、都会ならいくらでもいるわよ! 特に喫茶店! 何が唯一なのよ!」

「何を暢気に会話してんの!? 一応敵同士だぞ馬鹿美玖! ……ていうか、お前らの神様ってそんなんじゃなかった気がするよ!!」

「はっ!? いかんいかん、神への信仰を忘れるところだった。……我らが神は、世に魔をもたらす魔王なり!!!」

「「「「「我らが神に、魂を捧げよ!」」」」」

「世に魔をもたらす、って名前の通りだろうが! 独創性の欠片もねぇな!! 誰がそんな胡散臭いもの魂捧げるかっ!!!」

「「「「「我!」」」」」

「うっさいわボケ!!」

オカルト集団の先頭を走る男を中心に、祐真と美玖は嫌みや悪口の罵詈雑言をぶつけ続ける。
律儀に答える集団も馬鹿だが、それに話し掛ける美玖もどうかしている。
祐真はため息をゆっくりと吐きたくなった。

そんな祐真の右腕で抱えて持っているのは“蝶のような羽を生やした少女”。
揺れに怯え、体を震わしていた。

今回受けた依頼。
行方不明の少女の捜索。

その、例の“魔人の少女”である。

少女はどうもテレビの芸能人の娘らしく、警察に通報や捜索願いを出す訳にはどうしてもいかなかった。
故に、問題解決屋アカツキの出番。
芸能人直々に依頼されたこともあり、報酬ははずむということのため意気揚々と調査に乗り出した。

しかし、少女がまさかオカルトな集団に誘拐されていたとはこれっぽっちも思ってはいなく。
尚且つ、これ程のものとは。

正直に言うと、報酬の割に合わない。
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