Dreams

□さよならのかけら
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偉いわね、あの政治家の先生の娘さんなのに。


偉いね、大臣の娘じゃ、苦労する必要もないだろうに。


会社勤めなんてして偉いね。どうしてわざわざ働くの?


色んな人から、似たようなこと散々言われてきた。

うるさい。

親が大臣だろうと、金持ちだろうと、私が女だろうと。働きたいから働いてるのよ。

偉くなんかない。

だって、世の中の役に立ちたいだとか、苦労も経験しておきたいだとか、そういう殊勝な心は持ち合わせてないんだから。私はそんな良い子ちゃんじゃないし。

勉強も習い事も仕事も。なんだって全力で頑張ってきたけど、動機は至って不純。


あの人の気を引きたい。


言ってしまえばただそれだけ。それに尽きる。

近いようで遠いところにいるあの人。

なんでも私より上手くやりこなすあの人。

仕事に本気な、あの人。


いつだって彼の心は私になかったから、少しでも振り向かせたくて。追いつきたくて。肩を並べて歩きたくて。

私のことを 見て欲しくて。





 




だから今日も、めいっぱい仕事するつもりだったのに。

なのに、日常は突然崩れた。





「金城くん」
「はいっ?」

デスクに向かって今週中に書き上げるべき企画書と格闘していたら、ふいに肩を叩かれた。あまりに没頭していたせいで、返事をした声がうわずってしまった。振り向くと課長が立っている。PCの画面を凝視していた目にチカチカ星が飛ぶ。

「何でしょう」
「君のお父さんからお電話があったよ。なんでも、急なご用事があるそうだ。今日はもう帰りなさい」
「でも、企画書が」
「心配ない。明日やるといい」
「はあ…」


(急な用事?)

 
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