くんっと陽の光を嗅ぐように息を吸う。 温かく、なんとなく草の匂いがするようなまあるいにおい。 太陽の匂い。
ダメだ…ダメすぎる… 情けない気持ちと一緒に体から息を追い出す。 ため息をつけばこの感情も薄まるような気がして。 運動場では、冬のマラソン大会の練習と称して3000M走の授業が行われている。 マラソンが好きじゃないとはいえ、ちゃんと自分もあの輪に混じって走っていたのだ。 先ほどまでは。 またひとつため息を吐き出すとヒュッと冷えた風がツナを撫でる。 「寒ッ!」 ジャージの前をかき抱くと階段の隅に座り直す。 冬にさしかかったこの時期の運動場には時折凍るような冷たさの風が吹いたりするけれど、太陽はまだ暖かくて、胸に渦巻くモヤモヤした気持ちまで暖めてくれそうだった。 走る集団をなんとなしに眺めていると、それに気づいたのか先頭集団からするりと離脱してツナのいる方向に向かう人物がいた。 もう何十分も走っているはずなのにろくに汗も書いていない少年。 銀の髪をさらりとなびかせてツナに駆け寄ってくる。 「十代目〜!」 遠目からでもわかるほど、整った顔をぱぁ〜っと破顔させて。 |