不思議のダンジョン?!
□イナズマのだいち
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薄暗いダンジョンを奥へ奥へと進むティーダ達。疲れからか、皆口数も少ない。
ティーダは後ろを振り返りメンバーを確認する。
ティーダ
「エナ、大丈夫ッスか?」
最後尾を歩くエナに声を掛ける。彼女が無事なら、間の二人もなんとか大丈夫だろう。
エナ
「えぇ、大丈夫よ」
少し息は上がっているものの、大丈夫なようだ。それを確認して再び前に集中する。
〔イナズマのだいち〕。覚悟はしていたが、やはり攻略が難しい。
敵も強いが何より…
ポツ…ポツポツ…
ティーダ
「まただ…」
目まぐるしく変わるダンジョンの天気。この影響をもろにくらっているメンバーが一人居るのだ。
すぐ後ろを歩くクラウドに歩みを合わせ、小声で話す。
ティーダ
「バッツ、大丈夫そう?」
クラウド
「…大丈夫、とは口では言っているが、やはり苛立ちは隠せない」
後ろをチラリと見る。黙々と歩くバッツだが、その表情は酷く疲れていた。
常に雷雲がこのダンジョンを支配している。曇りはまだいいが、雨が降ると炎タイプであるバッツには厳しい状況なのだ。
クラウド
「雨の日は炎の威力が弱まってしまう。物理攻撃も出来ないわけではないが、本人的には自分の個性がいかせなくて不満だろう。だが、おかげで爆発が起きない利点もある」
そう、ダンジョン内にある罠の中で「ばくはつ」と「だいばくはつ」がある。ひっかかれば周りの壁も破壊してしまう程強力な爆発が起きる。もちろん自分達にも大ダメージだ。
一度掛かって全員瀕死に追い込まれてしまった。だから先頭に立つ者はかなり敏感になっている。
クラウド
「現時点での頼りはお前だけだ。なんとか頑張ってくれ」
ここに来るまで『ふっかつのタネ』は使いきってしまった。全員でライコウの元に辿り着くには、もう誰一人として戦闘不能は許されない。
先頭を歩く者は敵と最初に出会いやすい。くわえてフロア内のどこにあるかも分からない罠を見つけながら進むのは神経を使う為腹が減る。
なんとかやりくりはしてきたが、食糧も底をついた。後ろを着いて歩く者は空腹感を感じないので、ギリギリまで進んだらリーダーを交代する。そうして、今先頭に居るティーダが最後の砦、というわけなのだ。
ここでティーダが倒れたり、空腹になってしまったら戻って最初からやり直さなければならない。
相当奥まで進んだ。ここまで来てやり直しはしたくない。
「はぁ…」
わざとではないのだろう。だが不意に漏れた溜め息が一瞬で場を重くした。
溜め息を吐いたのはバッツ。クラウドが物言いたげに動いたが、ティーダが制止する。すると、ずっと黙って最後尾を歩いていたエナが口を開く。
エナ
「バッツ、あんた思ってた程強くなかったわね」
バッツ
「…え?」
ティーダ
「ちょ、エナ?!」
一同の歩みが止まる。薄暗い空間にエナの真紅の瞳が冷たく光る。
エナ
「あんたがそうやって嘆いたところで何も変わらない」
バッツ
「だってさ…エナ」
エナ
「言い訳は要らない」
エナは厳しい。でも、今目の前に居る彼女はいつもよりも更に厳しく、冷たい。
容赦なくバッツを突き放す。
エナ
「正直言えばこの先ホウオウまでバッツが活躍出来る場は無い。このまま落ち込んでいるようだったらあたしの人選ミスだった。帰ってくれて構わない。別のメンバーを改めて選出する」
バッツ
「なッ、俺は…!」
クラウド
「俺からもそうしてもらおうと思っていたところだ」