リクエスト

□ユキ様リク
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 埃とカビ、そこに混じる微量の薬品と書物の臭いがセフィロスの鼻をつく。

 懐かしさと、苦々しい思いが胸にわだかまる。

 城に居て、クラウドを構っていた方がどれほど楽しかっただろう?

 でも、今日はそんな気分じゃなかった。

 しかし…何故神羅屋敷になど訪れてしまったのか…。

 乗り気じゃなかったのに、何かがセフィロスの足をここに運ばせた。

 何か思い出しそうで、思い出せない。

 ふと、机の上に乱雑に置かれた本の山の中に、この場には似つかわしくない本が一冊。

『LOVELESS』

 何故か、見覚えがある。

 その本を手に取った瞬間、セフィロスの視界がぐらりと揺れる。



―…セフィロス―



 目の前が真っ暗になった。深い闇の中、自分を呼ぶ声が響く。


―セフィロス―

セフィロス
「…誰だ?」

―探してくれ…―

セフィロス
「何を?」

―破れた…ページ…―

セフィロス
「お前は、誰だ」

―君よ、因果なり…夢も希望も…既に…ぅ…な…―

セフィロス
「待て!」


セフィロス
「――ッ!!」


 ひんやりと肌が冷めるのを感じる。

 らしくもない。急に目眩がして倒れたようだ。

 そして、妙なものをセフィロスの翠の瞳が捉える。


セフィロス
「どういう…ことだ…?」


 近くに横たわるそれは、自分がよく知る人物。


セフィロス
「何故…私が居る…?!」


 もう一人の自分が、そこで気を失っていた。



―セフィロス…探してくれ…―


セフィロス
(何を…?)


―お前の、大切な…記憶―



 ゆっくりと、それは目を覚ます。

 やはり、その翠の瞳は、爛々と魔晄の光を輝かせていた…





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