仔犬の居るレストラン

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 バノーラホワイト(通称・バカリンゴ)

 次回入荷数200個

 時間指定 火曜昼11:30〜12:30頃



* * * * * * * * *



アンジール
「…………」


 副料理長のアンジールが難しい顔をして厨房に立っていた。

 視線の先には、このレストランの名物バノーラホワイトが一個。まな板の上に申し訳なさそうに置かれている。

 時計をチラリ。

 現在午前10時。

 背中越しに聞こえるジェクトの威勢の良い声や料理する音。注文を読み上げるザックスやティーダの声。

 それら全てが、アンジールには遠く聞こえる。

 まだ注文は無いが、一人…たった一人の注文で終わる。

 今この店の名物は最大の危機に直面しているのだ。


ザックス
「アンジール!アンジールってば!おーい、アンジール〜?」


 自分が呼ばれていることに気付き、アンジールは我にかえる。


アンジール
「あ、あぁ…なんだ?注文か?」

ザックス
「大丈夫?」

アンジール
「大丈夫だ」


 ザックスが、そう?と首を傾げる。


ザックス
「でさ、注文なんだけど…」


 アンジールの額から汗が流れる。


アンジール
(頼む!デザート欄だけは!!!)

ザックス
「えーっと…中森サラダ一つと、森々サラダ二つ!」


 アンジールは思わず胸を撫で下ろしていた。

 だが危機的状況は変わらない。

 届くまでまだ1時間半あるのだ。


ティーダ
「アンジールどうかしたんスか?」


 カウンター越しに見ていたティーダがジェクトに尋ねる。

ジェクト
「りんごがねーんだと」


 ジェクトはそのままの状態で呆れたように言う。

 ティーダもふーん…と言うだけで特に気にしたふうもなく客席へと切り返す。

 アンジールの気は焦るばかりだ。

 1分1秒でも早く、補充出来たら…!

 時間は経過し、もうすぐ11時…

 客の入りが盛んになる時間帯だ。

 その予想通り、どんどん客足が増える。

 客を長く待たせてはいけない。

 今日はデザート欄を撤去するしかない…
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