仔犬の居るレストラン

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 ある日の事…

 街の人達が噂する。

 "街に皇帝が来るらしい"、と。

 同時に街人は怯えた表情を見せる。

 あの皇帝は支配なさるのが大好き。今度は誰を選びに来るのだろう…?と。











 仔犬の居るレストラン。今日も満員御礼。

 店内はガヤガヤと活気に満ちている。


ティーダ
「――皇帝?さぁ…見たことないッスね」

ティナ
「本当?」

ティーダ
「この店立ち上げてから、一度もそんな奴街に来なかったからな」


 他の客達からも『皇帝』という言葉が忙しなく飛び交う。


カイエン
「いかにも。ここ数年は皇帝は城下にすら降りてきてはいないでござる。平和だったでござるのに」


 カイエンが深い溜め息をつく。


ティーダ
「どんな奴?そんなに…ヤバいのか?」

ロック
「全身金ぴかの鎧着てるんだよ。ありゃあ、純金だな」

マッシュ
「…ロック、手」


 ロックの手はお金を表すジェスチャーを無意識にやっていた。流石盗賊もといトレジャーハンター。


ロック
「おっと、まぁ…皇帝については詳しくは知らねぇ。俺もまだ忍び込んだ事ないしな」

カイエン
「触らぬ神に祟り無しでござるよ」

マッシュ
「なんでも皇帝は度々街に降りて、気に入った奴隷を見つければそいつを城に連れていくってよ」

ロック
「聞いた話じゃ、奴隷になった奴は一生戻って来る事がないらしい。一体、どんな仕打ちを受けてることやら」


 カイエンが言った通り、触らぬ神に祟り無し、なのかもしれない。

 皇帝が来る事に、みんなビクビクしている。奴隷にされたら何をされるか分からないから尚更なのかもしれない。


ファリス
「会計お願いするけど、いいかい?」

ティーダ
「あ、了解ッス!」


 急いでレジへと向かう。会計の途中、ファリスがそっと忠告する。


ファリス
「近頃この店は有名になった。いや、なりすぎているとも言える。狙われてもおかしくない。用心しなよ」

ティーダ
「え?あ…うっす。ありがとうございました」


 今の忠告は、皇帝に対して…だったのだろうか。

 やはりそうだと核心したのは、まもなくの事だった。
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