学園卒業・特別編
□想いあう気持ち
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ティーダは困った顔をした。今、どんな感情でここに立っていればいいのか分からない。
でもとりあえず、目の前に居る男は腕を組み眉間にシワを寄せだいぶ怒っている。
今しがた帰って来た男──セフィロスは部屋に入るなり不機嫌MAX。
呼び出されて、目の前に立たされる。なんだか学生時代がよみがえったようだ。
ひとつ、大きな溜め息を吐くとセフィロスは口を開く。
セフィロス
「どういう事か説明してもらおうか」
わー、怒ってるー。
ティーダ
「えーっと…」
遡ること数時間前──。
クラウド殴り込み(?)事件から数日が経った。
あの日からクラウドと連絡の取り合いは無くなってしまった。
これでいい。きっと、これでいいんだと思う。
あの日から変わったのはクラウドの事だけじゃない。
あんなに窮屈に感じていたベッドだが、今ではそうは思わなくなった。というよりセフィロスの密着度が凄い(あれ?寧ろ窮屈増してる…?)。まるで抱き枕のように抱いて寝る。
更に言えば、隙あらば体を求められる。抱き枕は「朝練がある」って断った時。でも、そうしてくれるんだから優しいんだよなって思う。
流石にずっと一緒に生活していると、休みの日を把握するみたいで昨夜は容赦なく抱かれた。
おかげで、起きた頃には既にセフィロスは仕事に出ていた。
今日は練習も無く、バイトも休み。ゆっくり出来る日だと喜んでいた。
だが、いざ起きて現実を知る。『何もない日』はとてつもなく退屈だ。
ティーダ
「オレ、今まで休日ってどうしてたっけ…?」
そんなの、自分が一番よく知っている。
クラウドの所へ行き、クラウドと過ごしていた。
ぽっかり、穴が空いてしまった。
急に寂しさが押し寄せる。涙がひとつ、ぽろりと零れた。その時だった。
ピンポーン。
インターホンが鳴り響く。
ゴシゴシと涙を拭き、インターホンを覗き込んだティーダは目を丸くした。
ティーダ
「え…なんで…?クラウド…?」
映っていたのはクラウドだった。
部屋まで通すと、間違いなくクラウドその人だ。ダンボール箱をひとつ抱えて目の前に立っている。
ティーダ
「クラウド、どうして…?」
もう会えないと思っていたのに…。
クラウドは持っていたダンボールを置き、無言でティーダを抱きしめる。その優しくて温かいクラウドの温もりに、引っ込めたはずの涙が再び込み上げてくる。
クラウドの指がティーダの涙をそっと拭う。
クラウド
「ティーダ…?」
ぐずぐずと泣き出すティーダの顔を心配そうに覗き込む。
ティーダ
「オレ…クラウドに、ひどいこと、言った…だから、もう、会えないって、思ってっ」
クラウドの為だと割り切ったつもりだった。だけどやっぱり寂しくて後悔してた。
会えた嬉しさからか、涙が止まらない。拭いても拭いても溢れてきて困っていると、クラウドが不意にキスしてきた。ビックリして涙が止まる。
再びぎゅっと抱きしめられる。
クラウド
「俺も、すぐに答えが出せなくて、ごめん」
ティーダ
「答え…?」
改めてティーダと向き合ったクラウドは驚く事を言い出した。
クラウド
「俺もここに住む」
ティーダ
「え…マジッスか…?」
抱えていたダンボール箱は引っ越しの荷物だったというわけだ。