隠された死神の村
□第2話
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颶羅
「──クリノッペ?…この黄色い生物がそうなのか?」
蘭(らん)
「そう!可愛いでしょ?」
颶羅は少女が大切そうに抱いている黄色い生物を怪訝(けげん)な顔で見ていた。
顔はヒヨコのようだが、目や鼻などは無く、口があるだけ。ほっぺはまんまると赤い。体も鳥のようだが羽ではなく人のように手と足らしきものがある。
…まぁ、本当に人形のようにちょこんと出ているだけだが。
どうやら2足歩行の生物であるらしい。
奇妙だが、どこか愛嬌(あいきょう)はある。
颶羅
「この生き物が死神のパートナーねぇ…」
颶羅はつい最近"死神"になったばかり。
とは言っても、もっぱら村で死神の子供達の世話をしているだけなのだが…。
颶羅
「クリノッペは何をするんだ?」
『パートナー』と呼ばれるからには何か死神的な仕事をするのだろう。
燈乃(ひの)
「迷ってる魂を慰(なぐさ)めるんだよ」
将夜(まさや)
「僕たち死神は生きた人間の魂を狩るでしょ?」
子供達がぽつぽつと話始める。
蘭
「こんな言い伝えがあるの…」
少女は静かに語った。
──隠された死神の村。その近く。
森の奥地で生き物の卵が発見された。
その卵から黄色い生物が誕生し、その生き物は迷える魂を導く能力があった。
それから死神達は、その生き物を大切な「パートナー」とし、共に生きた──
長
「汝(なんじ) 人の魂を狩り その仔 世にさ迷う幾多の魂を慰め葬った──」
颶羅
「長!」
いつから聞いていたのか、長が語りをまとめあげた。
長
「ホッホッホッ、聞いていたようじゃの。わしが話さずとも子供達が語ってくれた。あとは分かるじゃろうて…さ、行きなさい」
颶羅
「?!」
長の後ろから1匹のクリノッペが顔を出した。
長が笑顔で頷くと、クリノッペはふわふわと颶羅の元へ来た。気付くと、長は既に家路を歩き始めていた。
鈴(りん)
「クリノッペだ!ねぇねぇ!名前何にするの?!」
子供達が颶羅とクリノッペに群がってきた。
颶羅
「あ?あー…そうだな…。YOMI…アルファベットでYOMIでどうだ?」
燈乃
「なんでなんで?」
名前の由来を聞きたいのだろう。興味津々だ。
颶羅
「ここは黄泉の世界だからな」
颶羅はちょっとめんどくさそうに答えた。
燈乃
「兄ちゃんらしいや」
颶羅
「そりゃどーも」
こうして颶羅は、クリノッペの「YOMI」と子供達と死神ライフを楽しく過ごす事になったのである。
続く...