ノベル2
□夢幻逃避
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朝目覚めて、カーテンを開けると、雪が降っていた。雪は、音もなく、しんしんと降り積もっていた。
僕はそれを見ると泣きたくなってしまう。十年以上経った今でも、僕は彼のことを思い出してしまう。悲しいんじゃない。でも、ただ泣きたくなってしまう。
こんなにどこもかしこも同じになってしまった世界で、彼はまた迷子になってしまうんじゃないだろうか。自分でも気づかないうちに。ふらふらと、儚気に漂いながら。
思い切ってカーテンを全開にする。
外は、真っ白だった。
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