ノベル2

□夢幻逃避
1ページ/11ページ



朝目覚めて、カーテンを開けると、雪が降っていた。雪は、音もなく、しんしんと降り積もっていた。


僕はそれを見ると泣きたくなってしまう。十年以上経った今でも、僕は彼のことを思い出してしまう。悲しいんじゃない。でも、ただ泣きたくなってしまう。



こんなにどこもかしこも同じになってしまった世界で、彼はまた迷子になってしまうんじゃないだろうか。自分でも気づかないうちに。ふらふらと、儚気に漂いながら。



思い切ってカーテンを全開にする。


外は、真っ白だった。



.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ