ノベル2
□夢
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議長に言われた通り夕暮れの砂浜へと足を運ぶと、そこには艶やかな黒髪の小さなリリンがしゃがんでいた。どうやら彼が碇シンジ、らしい。
「シンジ・・・君?」
声をかけると、彼は振り向いた。
「カヲル・・・君?カヲル君なの?これは、夢?」
彼はどこか焦点の合わない、黒い瞳で僕を見た。
無理もない。渚カヲルは死んだ筈だからだ。彼の手によって。だが、僕は嘘をつく。
「夢じゃないよ。当たり前じゃないか、僕だよ、渚カヲルさ。」
「嘘、だって、カヲル君は、ふぇ、ぼ、僕が、僕が・・・殺したんだもの」
泣きじゃくり始める碇シンジを前に、チッと内心舌打ちする。鬱陶しい。
「そんな訳ないだろ?だって、僕はここにいるじゃないか。そんなのは、きっと、悪い夢さ」
心とは裏腹に、優しく彼を抱きしめる。ゼーレに言われたように。
「ほ、本当?」
そんなわけねぇだろ、と内心ほくそ笑む。そして、
「シンジ君」
とどめの
「寂しかったかい」
一言
「愛してるよ」
碇シンジは簡単に落ちた。リリンの単純さに最早唖然としながら、僕は碇シンジの髪を撫でた。