ノベル2
□夜話
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時計を見ると、午後の11時だった。今日は、とても早くベッドに入ったのに、眠れそうにない。眠れる訳もないけれど。
掌にはまだ生々しく彼の感触が残っていた。思えば、昨日の今頃はこうして隣に寝ていた筈なのに。 初めて出会って、急すぎる程に惹かれて、綺麗な銀髪や、頬に触れてみたいと思ったのに。まさかあんな形で触れることになるなんて。
気づけば泣いていた。声は出ずに、ただ涙が流れるだけだった。久しぶりだった。どんなに淋しくなっても、辛くなっても泣きはしなかったのに。彼は僕の心を開いた。だから、その分彼がいなくなったことは僕の心をからっぽにした。
「カヲル君・・・」
名前を呼んでみた。でももちろん返事は返ってこなかった。