ノベル2

□Hz《ヘルツ》
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10月をなめていたらしい。夕方が近づくにつれ、風が明らかに冷たくなってきていた。背中が重いのを我慢して、歩を進める。

『あんたの悪い所は、臆病なクセにすぐ調子に乗る所だと思うわよ』

アスカの言葉を思い出して苦笑する。アスカの言う通り、マフラーをしてきてよかった。あれから大人になれた筈なのに、僕はちっとも変われてない。



考えているうちに、目的地に着いた。大きな、木製のドアを開ける。

「こんにちはー」

声をかけると、中に座っていた神父が笑いかけてきた。

「いらっしゃい。もうそろそろ今年も来られる頃だと思っていましたよ、碇さん。」
「外はもう寒いですね。」「えぇ。」

マフラーをといて、近くの椅子に立てかける。
教会の中は、相変わらず優しい木の匂いで溢れていた。新しい筈なのに、懐かしい匂い。

「猫達は元気にしていますよ」

神父が笑いながら鍵を渡してくれた。この教会は出来た頃から野良猫達の憩いの場と化している。

「そうですか」

僕も笑って、鍵を受け取った。
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