ノベル3

□目次
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僕が彼に惹かれたのは、彼があまりにも真摯なエゴイストだったからだ。純粋とすらいえた。
彼はただ単純に、自分の幸せを願っていた。誰かに愛されたがっていた。誰も愛していないくせに。僕のことだって、決して愛していた訳じゃないんだろう。

多分、誰でも良かったんだろう。ファーストだろうが、セカンドだろうが。たまたま、彼にとって僕が都合のいい相手だったんだろう。

だから僕はそれに精一杯応えた。せめてその短い間、彼が居心地がいいようにしてあげた。僕なりの、愛情の紛い物を模倣して接した。彼はそれを初めて知らないおもちゃを与えられた子供のように、驚きながらも喜んだようだった。





そして今、彼は怯えているようだった。紛い物の幸せが終わることに。ぎすぎすした現実に戻されることに。何より、それが自分の手に握られていることに。



『カヲル君、』


縋るように。行かないでと必死に駄々をこねる子供のように。
君はどうして幸せになれないんだろうね。



やがて、泣き疲れた子供がふらふら立ち上がるように、彼はゆるゆると拳に力をこめ始めた。息苦しくなる僕の首。



彼が僕を愛していなくても、
僕は彼を愛していたのかもしれないと気づいた。









「だから、」



今度こそ君だけは幸せにしてみせるよ、碇シンジ君。











新劇カヲルを真面目に書いたことがなかったので。
あと、24話のカヲルとシンジって、綺麗だけど、優しくして距離をぼかしてただけで、カヲシンって感じではないのかもなぁと思ったので。へぇ。
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