私はあなたに本当の恋をした

□壊れた歯車は、正常に戻ることを知らない
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朝、いつもより早い時間に起きて、左目と右目に黒のカラコンを入れ、帽子を深く被った。 まるで、昔の自分だ。

昨日、家に帰ってすぐに冷たいタオルで眼を冷やしておいたから目は腫れてない。


何も変わらない私の顔。 だけど、変わっている私の顔。


(・・・笑えない)


この前まで普通に笑えていたのに、今は笑えない。 泣きたいのに泣けない。 そんな矛盾が、私の中でぐるぐると渦を巻いている。


学校に行く気がしなかったから、綺羅にメールをして学校を休んだ。

朝食を作り食べていると、綺羅からメールが返ってきた。


“本当!? 風邪じゃないでしょうね!?”


適当に、“違う”とだけ打って返した。 だって、本当に違うし。

数分たつと、メールが返ってきた。


“本当に大丈夫? 心配だから、英二と不二先輩を連れて名前の家に行った方がいい気がするんだけど…”


そのメールを見た瞬間、急いで綺羅に電話をした。 アイツはいつも携帯を持っているから、1コールで出るはず・・・


綺羅「名前、大丈夫?」


『綺羅は来てもいいけど、他の2人は連れて来んな。 今来られても困る』


綺羅「・・・名前、まさかアンタ…笑えないの?」


見事に当たった綺羅の予想。 そういうことは多々あったから大して驚きもしなかったけど、理由を聞いた。


『どうして?』


綺羅「名前の声、人を突き放すみたいな喋り方よ。 不二先輩と付き合う前のアンタみたい」


『・・・やっぱり、お前も来るな。 今来たら、お前に八つ当たりしそう』


綺羅「別に、八つ当たりされても良いけど…? 慣れてるし…『俺が駄目なんだ』・・・どうして?」


『…綺羅に八つ当たりすると、お前と英二まで巻き込んじまう。 それだけは嫌なんだ。 ・・・俺、暫く休むから』


綺羅「…そう。 何かあったら相談しなさいよ? 何かあったら不二先輩を名前の家に行かせるし…『やめろ』…名前?」


『・・・・じゃあな』


電話を切り、携帯を机の上に放り投げて朝食の後片付けを始めた。
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