私はあなたに本当の恋をした

□なんやかんやで大阪
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跡部と別れ、自分の家に帰ると綺羅が玄関のところで蹲っていた。


『…綺羅』


近くまで行って声を掛けると同時に、綺羅が俺に抱きついてきた。


綺羅「あんたねぇ! 何でも相談しなさいって言ったでしょ!? 何で1人で溜め込むのよ…。 私、そんなに頼りない?」


『…巻き込みたくないだけだ。 それに、普段はめちゃくちゃ頼ってるだろ』


綺羅「どうだか」


綺羅は俺に抱きついたまま、ずっと泣き続けて、拉致があかなかったから家に帰した。 もちろん、送ったけど。


『…さて、と』


俺は外から自分の家を見た。 多分、中はぐちゃぐちゃだろう。 この前、俺荒らしたし。


『…おい、神』


俺は、神を呼んだ。 ちょっとやってもらいたいことがあるから。


神「何じゃ、この忙しい時に」


『俺、この家から引っ越したいんだ。 今、俺の家荒らされててな』


神「家具などを荒らしたのは自分じゃろう」


『その根本的原因の奴が悪い。 …綺羅の隣の家でいいよ。 それか向かい』


神「・・・ハイハイ。 秘密がバレても知らんぞ」


『そんなのは承知の上だ。 いいから、さっさとしやがれ』


神「…作業を完了するには1日必要だ。 近所の人たちが不思議に思わないように、引越しのトラックも寄越してやる」


『この世界の引越し屋だったらいらねぇぞ』


神「わかっておる。 今日と明日は、どっかのホテルに泊まるんじゃな」


『へいへい。 じゃあな』


俺が携帯を出して綺羅に電話を始めれば、神はため息を吐いて消えていった。


『綺羅か? 今日と明日、綺羅の家に泊めてくんね?』


綺羅「別にいいけど…、不二先輩の家じゃなくていいの?」


『…アイツとは今、距離置いてんだ。 頼る訳にもいかねぇよ』


綺羅はため息を吐いて、“わかった”と言って電話を切った。 俺は家から数量の荷物をまとめて綺羅の家に向かう。
そして、歩きながら不二に電話をする。 …一応、心配してもらったしな。


不二「もしもし?」


『…悪かったな、心配かけて』


不二「本当だよ。 今、どこにいるの?」


『今から綺羅の家に泊まるところ。 今、自分の家に帰りたくなくてな』


不二「そう…」


心配そうな声を聞き流しながら、俺は本題に入る。


『不二、あのさ』


不二「何?」


『俺のこと、嫌いになったか…?』


今まで思っていたことを聞いてみれば、電話の向こうからは数秒経って笑い声が聞こえてきた。


不二「僕が名前のこと嫌いになるわけないよ。 嫌いになってたら、心配なんかしないし」


『そう、だよな…』


俺は不二の答えに安心して、何回か深呼吸してからこう言った。


『俺もさ、癪だけどお前のことが好きなんだよ。
頭冷やすのにもうちょい時間かかるけど、その…』


言葉を切った俺に、不二は“続きは?”なんて言うから、また何回か深呼吸して言葉を続けた。


『も、もうちょいしたら、よりを戻してくんねぇか…?』


顔が熱くなるのを感じながら言えば、速攻で“もちろん。”という答えが帰って来た。


不二「1年でも10年でも、ずっと待ってる」


『あ、あぁ…』


恥ずかしくなって、じゃあな! と半ばキレ気味で電話を切った。

その後は、早足に歩いて綺羅の家まで向かった。 綺羅に会えば、顔が真っ赤だから熱があるのか心配されたけど…。
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