短編

□心細いです
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ピピピ…


「ん?また上がったな…」


とある家の一室に

ベットに横たわる弟を心配そうに見る兄の姿が


「俊(シュン)?大丈夫か」

「ん…、に、ちゃ?」

「あぁ、大丈夫、じゃないか…」


今日は、両親が仕事で遅くなる

それでなくとも、弟大好きな兄が放って置くわけもない


「さ、むい」

「…汗もかいてるしな、ちょっと待ってろ」


着替えを取ろうと傍を離れようとする兄

だが、それは叶わない


「や、にぃちゃ」

「ん?どうした?」


不安そうに下がる眉に加え、熱のせいで潤んだ瞳に掠れた声、兄にとっての威力は半端ない


「行かないで…?」

「着替えとタオル持って来るだけだ、気持ち悪いだろ?すぐ戻って来る」

「やっ」


ギュウッと服を離そうとしない

不安の色も消えそうにない


「俊、本当にすぐだから、一分、な?」

「や、だぁ、や、いなくなんないで」


とうとう泣き出してしまった


普段は、我が儘を言わず物分かりの良い子なんだが…

まぁ、兄にとって、それは不満要素でもあるわけだが


「俊?」

「いなくなんないで、怖い、兄ちゃん、取られそうだもんっ、やだ、好き、すき、にいちゃぁ」


抱き付きながらグスグス泣く弟

落ち着かせようと背中をポンポンと叩く兄



これは、俊が普段思っている事だろうか

俺が、他の奴を好きになるとでも思っているのだろうか

俺の方が、怖いと、思っているのに…


「俊、大丈夫、いなくなったりしない、落ち着け」

「ヒク、にぃちゃ、すきぃ」

「…俊、怖がる必要ない、俊だけだから、愛してる」


チュッチュッと、額、目尻、頬とキスを降らせていく


「ん、兄ちゃん、大好き」


滅多に聞くことのない言葉

普段から言ってくれると嬉しいんだけどな


「俺もだよ、俊」

「んぅ、に、ちゃ…」


唇にキスを落とすと、再びベットに横にさせ、頭を優しく撫でた


「すぐ戻るから」

「…うん」


一分足らずで着替えとタオルを持って来ると、先ず、タオルで汗を拭い、すぐに着替えさせた


「よし、じゃぁ寝ろ」

「…嫌」

「手、繋いでてやるから」

「…傍にいる?」

「当然」


ふわりと笑った弟に微笑み返し、ポンポンとリズムを打つと、すぐに眠った

無論、手はしっかりと握られている


「早く治せよ」


軽く、弟の唇に自分のそれを重ね、手は繋いだまま、兄は近くの本を読み始めた








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