短編

□Honey*Honey!
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良く晴れた日曜日

あるブランドショップを貸し切っている二人がいた


「律(リツ)、これ着てみろ」

「は〜い」


超大手企業の若社長とその若社長が溺愛している少年である


「櫂(カイ)さん、着ましたけど、あの…」


怖々と試着室から出て来た律は、何ともまぁ可愛らしい恰好だ

白いふわふわとした服を着こなす高校生もそういないだろう


「あぁ、良いな、着てくか」

「えぇっ、ちょ、恥ずかしいですよ!」

「そうか?」


顔を真っ赤にしていやいやする律に、デレッと弛む頬を引き締めるのに苦労する櫂

そんな櫂に苦笑する秘書や店員の方々


櫂は、容姿端麗で10代と言っても誰も疑わないだろう(本当は27歳)

普段はクールな性格の櫂なのだが、律の前ではいつもこうだ

律は、高校生にしては少し低い身長に幼い顔立ちで、櫂に甘える姿は高校生とは思えないほど可愛らしい

が、その二人を見守っている光景は、何ともシュールである


「んじゃ、次コレな」

「ぅえ?」


という具合に次々と律に試着させ、次々と買っていく


「か、櫂さん、疲れました…」

「クスッ、悪いな、律」


櫂に寄り掛かってふぅ、と息を吐く律を優しく抱き留める


「社長、そろそろお戻り下さい」

「あぁ、分かった」


律を横抱きにして車まで移動する


「っわ、櫂さ、歩けます!」

「気にするな」


クツクツと笑って律の反応を楽しんでいる



ーーー…



会社に戻って来た二人は、真直ぐ社長室へ


「今日は、簡単に仕事だけですので、早く終わらせて下さい」

「…最近、人使い荒くないか?」

「律様を構いたいなら早く終わらせて下さいと言ってるんですよ。社長が仕事している間、律様と話す他の者に嫉妬なさる暇があったらさっさと終わらせて思う存分律様に構って下さい」


淡々と述べる秘書さん

ムスッと不機嫌になる櫂


「あ、あの…」

「律様、お茶を淹れて来ますね」


にこやかに部屋を出ていく秘書さんを見送る律を、後ろに引き寄せソファに座る


「櫂さん…?」

「あ゙〜、面倒くせぇ」

「クスッ、頑張って下さい?櫂さん」


櫂に身体を預けながら、ふわりと笑う律


「律…」

「へ、…ん、櫂さん、くすぐったぃ」


そんな律に欲情したらしい櫂が、律の肩口に顔を埋める


カチャリと開いたドアに気付く事無く…


「何なさってるんですか、社長」

「っ!…間宮、いつの間に」

「ちゃんとノックしましたよ?」


またもにこやかに答える秘書、間宮様


「さっさと仕事して下さい」


律と櫂を離して、律の前にハーブティーとクッキーを置く


「あ、ありがとうございます」

「律様、獣の前で隙を見せてはなりませんよ?」

「へ?」

「獣とは俺のことか?間宮」

「他に誰がいるんですか?はい、今日の分の仕事です」

「…律に触れるな」

「はいはい」


律の手にそっと触れて説く間宮に顔をしかめる櫂

間宮は、いつもの事なので気にした風も無い

間宮のみならず、櫂は誰かが律に少しでも触れると機嫌が悪くなる


「櫂さん、お仕事、頑張って下さい」


律は律で、大分櫂の機嫌取り&仕事のさせ方を身に着けている

と言っても、全て間宮が教えた事を実行しているだけなのだが


「…すぐ片付ける」


律の髪を梳いて仕事を始める櫂に呆れる間宮

まぁ仕事してくれれば何でも良いけど、と間宮は思う










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