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□カナリア
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La――――――La―――――

♪、♪♪ ♪



大きな、楕円を半分に切ったようなかたちの鳥かごのなかに
二人、向き合って歌っている。
それはもう、透き通ったような 美しい声で。
次第に、ふたりは 見つめ合い歌いながらも、お互いの手と手を合わせ 指を絡めた。
綺麗な黒髪を、短くそろえた Yシャツ一枚で居る少年が ほた、と大きくまるい綺麗な茶の瞳から 大粒の涙をひとつぶ零した。
それを辛そうに見つめる、白髪にエメラルドの瞳の少年。
それを、窓際に置かれた 大きな木の仕事机から眺める僕。
はぁ、と苛立ちを含む溜め息を漏らす。

この、胸が煮えたぎるような いらいらには、うんざりしている。
彼の涙は愛しくも、彼の声は恋しくも 相手は機械、嫉妬などどうかしている それにあれはプログラムされた演出にすぎないと 思う僕も馬鹿らしく思えてきた。
それほどに、僕は彼が愛しい。


あぁどうか、世界で一番綺麗で儚い 恋の歌を、僕に歌ってはくれないか。
愚かな僕に、どうか どうか。

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