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□朝顔の花
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ひばり、ひばり、ひばり_______...!!。



遠くで、そう 呼ばれたような気がした。









10年経っても あまり変わらないように見える君は、久しぶりに会う同級生や知人には 随分男らしくなったと言われている。
僕からしたら、未だ幼さの抜けない笑顔と 中2で成長が止まったのだろう思考は、まだまだ子供のようで 大人っぽくも男らしくも思えない。

それでも少しばかりは話しの分かる 確りとした男になって、仕事も大分順調にこなせる様にもなった。
多少 敵に情け容赦をかける癖が抜けないが、そこは山本の良いところだから とボンゴレ10代目は言う。

でも、でも 僕は。

山本は、俺は大丈夫だから と言って、自分を気遣ったところを見た事がない。
それは時に、周りをも悲しませているという事を あの子は分からないでいる。
だから、そんな頭の緩いあの子を

僕は 一生守ると決めた。









なのに。









「ひばり、ひばり、ひばり....っ!!!」

泣き叫ぶ君が すぐ傍に居て、胸を貫く激痛を忘れさせる。
でも視界は霞んで 肝心の君の泣き顔は見れないし、君を抱き寄せようと伸ばす手は 力が入らず君の頬を伝う涙らしき雫を拭うくらいしかできない。

何で君が泣いているのかが分からない。
いつも君が 敵やらボンゴレやらにやっている事を、僕が君にしたというだけ。
するのは平気でも、されるのは嫌なの?わぉ、君って凄くワガママだね。

不思議と、死んで行くのに辛くは無かった。
君をもっと守っていたかったとは思うけれど、それ以上に望むものはなくて まぁいいか、と諦めることができた。
きっと君が、僕の為に泣いてくれているからだろう。
自然と口元が微笑むのが分かった。

「ひばり、やだ やだ、なぁ、一人で死ぬなんてずるいだろ...俺を置いてくなんてずるいだろ...っ」

まるで子供のように泣きじゃくって僕の名を呼ぶ君は やっぱり愛しく思えて仕方なくって
柔らかく黒い短髪を優しく撫でると、君が泣きながら微笑むのが 空気で分かった。
それが嬉しくて、僕は頬を伝わせて雫を零した。生まれて初めて、涙が流れた。
なんとも言えない切ない想いが 胸を焼いて、掠れた声とともに一言だけ 言葉が零れた。


「ありがとう、大好きだよ」

その言葉を向けられた本人は 少し驚いた様子で、でもとびっきりの笑顔で 俺も大好きだぜ、と言ってくれた。
それはどうしようもなく愛しくて切なくて、涙がガラにもなく零れた。零れて零れて、一生分の涙を流した。
涙が零れていくのと同時に、生きる力も零れていくのが分かって とうとう何も分からなくなった。








ある、夏の日。
僕は愛しい人に見守られて 永久に眠った。



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