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□□■恋熱■□
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PM6:00  遠くで、この時刻を知らせるチャイムが鳴った。

日はすでに沈みかけて 校門前は帰宅する人の車が沢山通りすぎていった。
校内には殆ど人影は無く 期末テストが明けてコンクールが近い吹奏楽部と合唱部、それと中体連全国大会が間近なバスケ部と野球部しか居なかった。
誰も居ない教室や廊下を、夕日は赤く焦がすように染めていた。

「ありがとうございましたー!!」

元気の良い挨拶とともに部活が終了した野球部は、てきぱきと片付けを済ませ てんでに帰っていった。
山本は監督と明日の練習メニューの打ち合わせをして、一番最後に部室を出た。
もう遅いので早く帰らなければ、と小走りに校庭を校門の方へ横切る。
すると、校門の前に見慣れた人影が見えた。

「あ、ごくでら!」
「遅ぇよ野球バカ」

腕を組み、いつもの無愛想に眉間にシワを寄せた獄寺が 苛々したように言った。
山本は獄寺に駆けよって、きょとんとした。

「獄寺、もしかしてずっと俺のこと待っててくれたのか?」
「あぁ。 十代目が待っててやれとおっしゃったからな...仕方なく、な」
「そかー。ありがとな!」

嬉しそうに山本が微笑む。 
行くぞ、と獄寺は視線と言葉で促す。

「獄寺は、たまに優しいからいいよな。俺、獄寺のそういうトコ好き」
「うるせぇな。 俺がいつてめぇなんざに優しくしたんだよ」
「さっきとか。ツナに言われたからって、律儀に待ってなくてもいいハズなのに 待っててくれただろ?」
「十代目に忠実なだけだっつの」
「でも宿題教えてくれるし」

な?と首を傾げ笑う山本を横目で見て 獄寺はため息をついた。
しばらく歩いて、山本が思い出したように言った。

「あ、俺 期末頑張ったんだぜ?平均取れたのな」
「...それっぽっちかよ」
「えー、でも俺にしては頑張った方だって。平均はかなりすげぇ」
「まぁな」
「だからさ、何かご褒美くれねぇ?そしたら次も頑張るしさ」
「あ?俺 金ねぇぞ」
「ンな金のかかるやつなんて要らねぇぜ。なんでもいい」
「...っち」

獄寺は少し考えてから、じゃぁ目ぇ瞑れ とため息混じりに言った。
山本は、言われたとおり きゅ、と目を閉じる。
一呼吸おいて少し背伸びすると、山本の唇に自分の唇を重ねた。
獄寺はすぐに離れると 少しばかり頬染めて、わざとらしい笑みを浮かべた。

「俺からのご褒美。」

山本は驚いて目を丸くし赤らんで、小さく震えながらも
口元を片手で抑えている。

「ご、くでら....今、なに、して...!」
「ご褒美キス。てめぇにはコレで充分だ」

獄寺はイタズラっぽく微笑して、山本に背を向けた。

「俺はこっちから帰る。んじゃぁな」

獄寺は夕日に中で照らされながら帰って行った。



その夜、山本は病気でないのに熱が出たという。

                          ☆END☆

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