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□初夏の初恋
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ねぇ聞いて。君に言いたいことがあるんだ。







少し前のことになる。
僕と君が本格的に知り合ったのは初夏のことで、それまではただの生徒としか思っていなかった。
確かに、君の反射神経と瞬発力、運動神経には凄く興味があったけど 特に風紀に障ることもしていないので放っておいた。
それが、だ。
初めて会った時のことはあまり覚えていないけれど、これだけは覚えている。鮮明に。
あの時君が、とびっきりの笑顔で僕に「ありがとう」と言ったこと。
世間一般からすれば なんらかわった事のない普通の出来事のように思えるけれど、あれは僕にとって初めての体験で とても衝撃的だった。
第一、笑顔を向けられたことすらなかった。
ありがとう、なんて単語は聞いた事もなかった。
とても、不思議な気分になった。

それからだと思う。君のことが気になり始めたのは。

応接室の窓からは丁度校庭が見えて、野球部の練習風景も特等席から眺めていることができた。
毎日毎日飽きもせず ずっと眺めていると、何時の間にか君が手を振ってくれるようになった。
それこそ手を振り返しはしなかったけれど、眩しい笑顔で手を振られるとどうしようもなく胸が熱くなって とても擽ったかった。

愛したいし、愛されたいし、触れたい。
そう強く思って でも近づくことはできなくて。
触れたら壊れてしまいそうなくらいに 笑顔がきらきらしていて、とても愛しかった。
夜はずっと眠れなくて、夢を見たとしても 君が居ればいいのに、と思うようにさえなっていた。
やり場のない苛立ちが 喉仏あたりで詰まっているようにも、溢れ出しそうな涙が燻っているようにも思えるこの感情は 君のせいなのだと分かるのに時間は掛からなかった。

ガラにもなくじんっとしたりして、でも切なく遠くから見ているだけ。
それだけでは辛かった。だから。

今君に 聞いてほしいんだよ。



僕は 君が好きなんだ。
どうしようもなく愛しくて、どうしようもなく愛しているんだと 思う。
この泣きたいような 嬉しいような 不思議な感情を、もっともっと上手く表したいのだけれど。
そこまで僕は器用じゃないし、それを考えていられる程 僕は大人しくもない。
だから、この感情を一番近いもので表すなら

僕は君が大好きで仕方ないんだ。

大好き以外に思いつかないし、大好きなのは確かだから。
たったこれだけの言葉。
でもこれが 僕の君に贈る全て。










大好きだよ。

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