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□所有印
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今日は とても綺麗な満月の日だった。
夜10時頃。
開け放たれた窓から、黒い影が室内にふわりと入って来た。
室内は薄暗く、月明かりが唯一の光だ。
(無用心だよね...窓を開けて寝るなんて)
そう思い、あたりを見渡す。
夜目がきくため、はっきりではないが だいたいのものは認識できる。
と、丁度軽く視線を畳の床へと視線を落とした位置に 無防備に腹を晒し、ぐっすりと眠りこけている人物を発見した。
山本 武
ついこないだから付き合い始めたばかりの恋人。
時々無断で山本の部屋の窓から入って来る雲雀のために 無用心ながらも、常に窓は開いている。
夜は遅くに来る為、殆どの場合山本は寝てしまっている。
本人によると、PM9:00頃にはいつも寝ているそうだ。
早過ぎる、と雲雀は感じるが 早朝から部活がある山本にとってはこれが当たり前。
それに普通の中学生ならこれぐらいに寝たほうがいい。
その点、山本は中学生のあるべき姿と言えるのだろう、と思う。
そんな愛しい恋人の寝姿は 無防備すぎるくらいに無防備で寒くはないのだろうかと心配する。
(風邪ひく)
雲雀は山本を起こさないように多少気遣って 布団をかけ直してやった。
それに反応したのか、山本が小さく唸って寝返りをうつ。
背中を向けられた。
全体的に あまりにも無防備すぎるので、雲雀は良いことを思いついた。
翌日。
登校中にツナが吃驚したような声色で山本の名を呼んだ。
その指先が指すのは...
山本の首筋にある、赤く丸い痕だった。
「山本...いつの間に大人になっちゃってたの...?」
「え?あぁ、これ 虫刺されじゃねぇの?昨日、完全に窓開けたまんま寝てたしな」
「...へ、へぇ...そうなんだ?じゃぁそうかもね」
(雲雀さんの仕業かー...)
放課後、山本の首筋にいまだ残っていた痕を見て、雲雀は満足げに微笑したという。