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□白と黒は交わらない
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ある日、俺は 奇妙なモノに出会った。
それは人間とは言いずらく、かといって幽霊と言うのも間違いになりそうだった。
ならなんなのか、と言われると それもまた返答に困る。
そんな、よく分からないモノ。




「?...なんだ、これ」

俺は道端に落ちていた茶封筒を拾った。
それはずっしりと重くて、中には大量の札束が入っていた。

「えぇえ!これいくら入ってるの....っていうか交番に届けなきゃ」

そう、口にした瞬間 右の耳元でこっそりと誰かが囁いた。

「交番になんて、届けなくてもいいんじゃない?持って帰れば、全部君のものだよ」

それは低く、柔らかい綺麗な声だったけれど 言っていることは綺麗でなかった。
しかし、浅はかな俺は あぁ、そうだなと頷いてしまった。まるでその声に操られているかのように。

「そうだよな、うん。最近小遣い足りなくて困ってたし...これで大人になるまでくらい、遊んでいられるよな」
「うん。だから早く何処かへ隠しなよ。見つかっちゃうよ?」

「ちょっと待って!」

左の耳元で誰かが叫ぶ 慌てているようだ。

「それは誰かが一生懸命働いて、よく頑張りましたねっていう代わりに貰ったお金だろ?
 それを勝手に持って行って使っちゃダメだと思うし、すぐに交番に届けたほうがいいと思うぜ」

そうだよな、と納得し 頷く。

「よし、じゃぁ交番に行ってこようかな」


「待ちなよ」

今度は右の低い声が苛々した様子でストップをかける。
どうやら左の声の主へと文句を言ってるようだ。

「ねぇちょっと、邪魔しないでくれる?交番に届けてもなんの利益にもならないでしょ」

その声に 慌てて説得するように言い返す、左の声

「でも もしかしたら運よくあのお金のいくらかは貰えたりするんだぜ?
 もし貰えなくっても、感謝されたんならそれが利益でいいじゃねぇか」
「何言ってるの。いくらか貰えても、今持ってる金額より少ないじゃない。
 取り分が減ったら 利益とは言えないよ」
「そ、そうだけどな...」
「だいたい、落ち零れの悪魔のくせして でしゃばらないでくれる」
「うん、ごめん....じゃなくて!それはヒバリが悪いことしようとしてるから...」

「ちょっと待った!!」

今度は俺がストップをかけた。
なにかおかしい。

くるりと振り返って、声がする場所を見た。
すると。

そこにはいかにも、という風な容姿をした天使と悪魔がふわふわ浮いていた。
に、してもおかしい。
さっき 俺にネコババを薦めたのが向って左の男の子だったとしても
その子は 背中に白いふんわりとした小さな翼が生え、ふわふわとしたカーテンのような真っ白の衣服を着ていた。
そして頭上にはキラキラと光る金色のリング。
何処からどう見ても、天使にしか見えない。
一方 交番は届けるよう言った、善人な男の子は
腹、肩、太もも背中やらの露出がやけに多い 格好で、ニーハイブーツを履き、腕にはお洒落にベルトが巻いてある。
背中には黒い、いかにも悪魔という風な翼が生え 口を開ける度に牙がちらちらと見え、黒い先が尖った尻尾まである。
頭には2本の小さい角が、つんつんとした髪の間から見えている。
正真証明の悪魔。

コレは一体どういうことなのか。

「どっちが悪魔でどっちが天使なの?」

腕を組み、溜め息混じりに問いかけた。
するとそれぞれが相手を指差して、当然というふうに答えた。

「こっちのヒバリ、ってやつが天使」
「こっちのたけし、って子が落ち零れ悪魔」
「落ち零れてねぇって!ヒバリだってまだ下位だろー?」
「それでも君よりは上だよ。まだ君は昇格試験に受かったことないでしょ」
「ヒバリだってまだランク3だろ!俺は0だけど...」

「ちょ、ちょ、ちょ、勝手に話しを進めないでよ!
 俺がちんぷんかんぷだろ」

理解力がないね、と苛々した様子で ヒバリ、というらしい天使の子は溜め息をついた。

「だから、僕が天使のヒバリ。ランク3で、この子より一個年上」
「俺は悪魔のたけし。まだランクがないくらい下位だけど...やる時はやるんだぜ?」

神様が魂を入れ間違えたのか。
天使が悪人で悪魔が善人。こんなことってあるのか...?
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