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□Un angelo dell'amore
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僕は、ある子に恋をした。
ふわふわと、明るい性格の子で 僕とは正反対。女子にしては活発で男勝りなその子は校内でも一際目立っていて、知らないものは居ないくらいだった。

初めての恋だった。でもどうしたらいいか分からなくて、ガラにもなく泣いてしまうかと思った。
そんな、時。

「泣くなよ。あの子に嫌われちまうぜ?」

ふいに声がしてあたりを見渡す。

「っはは、違うって こっちこっち」

声のするほう。自分の頭上を見上げると、にこにこと愛想良く笑った顔があった。

「よぉ!好きなやつが居るんだって?」

青春してんだな、と呆然とする僕をスルーしてヘラヘラと笑う。

「俺が 恋を成就させんの、手伝ってやろうか」
「...は?」

へへへっとまた、笑った。







いきなり現れたその男子は「山本武」といった。名前こそ普通だが、どうやら れっきとした恋のキューピッドらしい。
確かに、何処かふわふわとしていて 背中には純白の翼が生えている。
1日牛乳を牛乳瓶一本分は飲まないと拗ねる、天使らしくない天使。
そんな山本武がまず、僕にやれと言ったのは...

『挨拶』

「挨拶しなきゃ、会話もなにも成り立たねぇぜ」とのこと。

朝。あの子を待ち伏せして 偶然を装い、擦れ違い様に「おはよう」といった。笑顔で返してくれた。
表には出さないが、その時の僕は有頂天だった。

それから幾つか課題が出され、それを何とか全部クリア。
さぁ、これで告白だという時。
山本がいきなり叫び声をあげた。

「あー!これ!!」
「うるさいな。何が言いたいの」
「あぁ、もうコレ使えば一発だったのな...」

そう言いながら取り出したのは、ボロボロのバットと野球ボール。

「...何コレ」
「何コレ、って...バットとボール」
「そうじゃなくて。何に使うの」
「これな、一般的に言う キューピッドの弓矢な。それを改良して、俺に合うタイプしたやつ。だから例えば...」

言いながら辺りを見渡し、近くに居た女子に向ってボールをバットで打った。見事そのボールはその女子に当たり、吃驚した様子でこちらを見た。
と、雲雀を捕らえたその視線が一瞬にして熱のこもったものに変わったのが手に取るように感じられた。

「まぁ、いわゆるホレ薬みたいなものなのな」

ど?便利だろ、とにこにこする山本。
それを見て、雲雀は首を振る。

「嫌だよ、そんなの。便利じゃない。邪道だ」
「!ヒバリ...」
「そんなので人の気持ちを操って、本当の恋だと言える?ふざけないでよ。僕は絶対、そんなもの 要らない」
「...」

その言葉に山本は俯いた。
怒らせた?不安がよぎる。
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