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□ホワイト・ストロベリー
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ふにふにと甘い薄桃色の菓子を頬張る。
ふんわりと口の中で弾力を返し、しゅぅと情けなく消えていく。
また一つ、イチゴの香りのする菓子を頬張る。
また ふわりとしては寂しそうに消えていく。


「なぁ、美味い?」

ふいに隣に座って 苺に練乳をかけて次々とたいらげていた人物が問いてきた。

「うん、美味しいよ。いる?」
「ううん、いいのな。白蘭が好きなやつだから 俺が貰っちゃ悪いだろ?」

そう、柔らかく優しい笑みを浮かべてこちらを見るその人は
この時代には居る筈の無い中学生の山本武だった。
何故ここに居るのか、なんてことは気にしてはいけない。
気にしたらこの世界は気にする事だらけだ。



「あ、苺 僕にも頂戴」
「ん はい」

赤く、可愛らしく熟した実の入った 白い、つるりとした陶器を差し出して笑む山本。
愛らしいその笑顔に返すように、悪戯っぽく僕は微笑して 軽く口を開け、してほしいことを示す。
その意図を察して 少し恥ずかしそうに赤らんでから 躊躇いがちに、きちんとヘタを取ってから苺を口に入れてくれる山本。
なんだかんだで結局は我儘を叶えてくれる。

「...練乳ついてるよ」
「え?どこ」
「口の横」

んー?と親指で拭おうとするも余計頬のほうへ広げてしまった。
くすっと思わず笑みを漏らして山本の頬にべっとりと付いた練乳を舐め取ってしまう。
山本は顔を真っ赤に赤らめて口をパクパクとしている。

「赤くなっちゃってるよー?かーわい♪」
「な...っ。もぉ、やめろよなー」

俺 日本人なんだって、と拗ねたような仕草で言う。

これは人種など関係なく、君にしかしないって まだ気付かないの?

気付いたら 僕はソファに仰向けに横たわる山本に覆いかぶさるような体勢になっていた。

「びゃくらん...?」

きょとんとして 未だ状況が掴めない様子の山本。
そんな山本を見据え、少し苛々とした声を出す。

「あのさぁ、君...こんなこと、イタリア人だからって誰にでもやると思うの...?」
「え、スキンシップみたいにやるんじゃねぇの?」

ぶちっ

僕の中の何かが、切れた。

その音が聞こえた、次の瞬間 僕は山本のシャツを器用に素早く脱がしていた。

「え?え?ちょっ、びゃくら...っ」

僕の名を呼ぼうとした山本の口を 自分の唇で塞ぎ、黙らせた。
深く、浅く。
それだけで慣れていない山本はくったりとするのが分かった。
それに気をよくして ふふん、と鼻で笑う。
待って、という制止の声を聞かずに 右手を胸の突起物に手を伸ばす。
少しだけ触れると 驚いたような、びくりとした反応が返ってきた。
片方は指先で摘み、もう片方は口に含んでやった。
それに応えるように 山本の、僕の肩を掴む力が強くなった。

「ぃ、や...っ。だめ、だめ、だめ!!」
「何が?」
「えろいことはしちゃ、だめなのな!」
「なんで?」
「!....恥ずかしい...から」

ふうん、と興味なさそうな反応をわざとかえす。
やめる気がないことに気付いたのか、ほんとにだめだからな!と唇を尖らせてむぅっとする山本。
そんな姿も 僕を煽るだけ、っていうのはまだ分かるはずも無い。

「〜♪」
「!なっ、待てって白蘭...!」
「僕を怒らせちゃったのは君なんだからちゃんと責任取ってよね?」
「怒らせた...?」

山本は驚いた様子で、目を丸くした。
そう。と簡単に答えて くすくすと楽しげに、意地悪っぽく笑い声をもらす。

「ということで。今日は帰さないから。覚悟しといてね♪」
「えっ、ちょっ、待っ、タンマタンマタンマタンマ....っっ!!!」










次の日。


「...っ、痛ってぇー」


気付いたら家のベッドで寝ていた。
腰をズキズキと痛くって、とても歩けたもんじゃない。
ぐったりと身体は疲れていて、これから学校だというのに 身体の節々は痛むし、ダルくて行けそうもない。
喉もカラカラで 声はガラガラ声。
未だに身体が熱を保っていて、べとべとと汗で塗れた衣服の布が肌に張り付く。

あれから何時間だろう。
ソファで、ベッドで、風呂場で...
思い出すだけで腰がズキズキと痛む。

あ、苺 食べかけて置いて来ちまった。






深く、深くため息をついた。

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