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□粉雪
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「ん、ぁ...あ!」


静かに、静かに雪が降っている。

それとは対象的に 声と音が充満する 障子と襖で仕切られた、屋敷の一室。
その座敷以外に人の気配はなく、また 一つも明かりが無い。
この座敷でさえも、薄暗く蝋燭の灯がともっているだけだった。


「ひば、り...待っ...て...」
「なんで」

すかさず問いる。
その問いの返答に困るのか 問われた本人は、もごもごと言葉を濁した。
きっと、まともな思考が働かない頭で 何かにすがるような思いで、衝動的に発した言葉だったのだろう。

「ん、ーん...な、ん、で...も、ねぇの、な...っ」
「ふうん。...」

そう、と興味無さそうに答えて 行為を再開する。
広いとも言えない座敷に響く水音。それはやけに耳について 頭にこだまする。
それと連動するかのように 僕が組み敷いた相手から、漏れるように発せられる甘い声。
酷く甘く、誘うかのようなその声に 自然と口元に笑みが浮かぶ。

「っく、ぅ...ぁ...だ、め それ、だめぇ、っん」
「...でも、君はイイんでしょ」

熱に浮かされた頭で ゆっくりと僕の言葉を理解し、赤く火照った顔を横にふる。

「...正直に言ったら?君の意思とは反対に、体は随分と素直なようだけど」
「ゃ、違っ...ひ、ぁ!」

また、イイ所を刺激されて 横たわる体がしなる。
交わる熱が熱い。このまま溶けてしまうのではないかと 一瞬思った。

「ぅ、あ...っ。...も、っ....むり...っ」
「...いいよ、イっちゃえば?」
「はぁ、ぅ...ひばり...っあ!」

最後に 僕の名を呼んで、快楽とともに白濁を下腹部に吐いた。
それに続き僕も 熱く脈打つ体内へと、射精した。
快楽の余韻に浸る間もなく、せっかちな僕は 穿たれたままの自分のものを引き抜いた。
それにまた、ぴくりと反応してくれる その体が愛しい。

ぬるぬると濡れた下腹部は 外気に触れて一気に冷えた。
それを感じて はぁ、と溜め息に近い 熱い吐息を漏らした。
汗に濡れた肌は空気によって 急速に冷えていった。









静かに静かに、雪は降り続く。

体の熱を冷まそうと、僕は着物を着直して中庭の縁側に出た。
障子を開けるとすぐそこで、中庭の小さな池は凍って 雪が白く積もっていた。
降り積もる雪はどうやら、ふんわりとした粉雪のようで 粉砂糖をたくさん庭にふりかけたように見える。
しんしんと降り続き、積もる様を ただただじっと見ていた。

「...ヒバリ?」

後ろの障子がすぅ、っと少し開いて 寝起きなのだろう。少しぼんやりした顔が覗いた。

「起きた?」
「うん。...あ、まだ降ってんのな」
「...こんなに降ってちゃ、サンタクロースも仕事が大変だろうね」
「はは、確かにそうだな...」

楽しそうに笑って こちらによろよろと這い出て来た。
そのまま、僕の隣に体育座りで落ち着いた。

今 同じ場所で同じ物を見ている。
それでもきっと、考えていることは擦れ違っているんじゃないかな。
それはそれで、幸せと呼ぼう。
僕達が 考えている事も、思っている事も、相手への想いも 全て違ったっていい。
それが、僕らだと言えるのなら。
今この時に1秒でも長く、一緒に居られるのなら。
例え 僕のこの意思が揺らごうと、君を守れるなら。

僕は 孤高のプライドさえも、捨てれる。










END (オマケ付き↓)
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