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□。○モノクローム・ラヴ○。
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シパァァァン....

「....っ」

冷たく、透き通った空気が肌にはりつく。
小さく、金網の張られた窓からは満月の発する、白銀の光が、コンクリートのひんやりとした床を小さな長方形に模っている。
月光以外の灯りが無い、狭く冷たい牢の中で
支配人は使い古して所々擦り切れた鞭を片手に、崩れ落ちる『獣』を見下ろす。
支配人は額から垂れた汗を拭った。

「明日の正午からお前の処刑が開始される。....責めてそれまで自分の犯した罪を悔やむんだな...」

どこかで聞いた事のあるような台詞を残し、支配人は冷たく笑って 支配人を睨みつける獣に背を向けた。
その瞬間、支配人は、つ、と首筋に小さく冷たい痛みを感じた。
と、目の前に人が居る事に気付く。

「誰だ....?!」
「名乗る程の者でもねぇよ。それより.....」

目の前の短髪で長身な男が支配人の首筋に刀を付きつけたまま、後ろの獣と化して、壁と鎖で繋がれた死刑囚の方へと目をやった。

「そいつ、返してくんね?」

重苦しく体に触れてくる闇に似合わない、爽やかな笑顔で言う。
支配人はまたも汗を垂らして、そっと腰の銃に手を忍ばせる。

「おい」

声をかけられビクッと動きが止まる。

「争い事は好きじゃねぇんだ。怪我人出るしな。だから、大人しくしててくれよ」
「何言って.......こいつは渡せない」
「いいだろ。どうせ死刑される奴なんだし。一人くらい居なくなってもバレねぇよ。な?」
「そういう問題じゃ....」
「それなりの礼はするから」
「!!....」

支配人はしぶしぶ頷いた。

血と汗で肌を濡らした雲雀の鎖は、多額の金と引き換えに ガシャンと重い鉄の音とともに切られた。



誰も居ない、月明かりに照らされた荒野の一本道を
夜の闇に溶け込んでしまうように真っ黒いバイクに乗って走っていた。
山本が運転し、雲雀が後ろに乗って。

「.....また腰が細くなってない。痩せたでしょ」
「しょうがないだろ?ヒバリが居なかったんだから」
「? 意味分かんない」
「寂しかった、って事。ってかそれ言うならヒバリだって三日三晩飲まず食わずで、しかも一睡もしてねぇらしいじゃん」
「.........」
「だから『おあいこ』。な?」

雲雀は何も、言わなかった。






その夜の月は、白く冷たく、綺麗だった。



                     END

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