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□Lark syndrome
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"イタリア ローマ行き 13時40分発の便は―――..."



「ヒバリ、気ぃ付けてな」
「君こそ」

二言三言、言葉を交わし お互いの頬に軽くくちづけて
ひらりと手を振り合うと、大きなスーツケースを手に持った恋人の姿は 行き交う人ごみの中に消えてしまった。







俺 山本武と、雲雀恭弥ことヒバリは 恋人同士だ。
今年でもう、10年だか11年だかになる。
長い年月が経ちすぎて、もう何年目なのかなんて曖昧だ。
お互い、そんな感じだから 全く気にしていないが。

俺たちは 古く格式高いイタリアンマフィア、ボンゴレファミリーの幹部で
それぞれボンゴレ十代目の守護者を務めている。
勿論、長期の出張なんてのはしょっちゅうで 特にヒバリは財団のこともあって年中世界各地をふらふらしているようなものだ。
そんなもんだから、常に遠距離恋愛。
たまに日本に帰ってきては 会えなかったぶん、一晩で身も心も満たし合って また昼の便で世界の何処かへ発ってゆく。
お前等よく別れねぇな、なんていう呆れた言葉も聞き飽きるほど言われても尚 俺らは変わらず手を繋ぐ。
寂しくてどうしようもなくなると帰ってきて、繋いで 離れて、また寂しくなる 繰り返し。
それが愛しくも歯がゆく、いっそう愛情を感じさせる調味料になることは 皮肉ながらもこの10年ほどで理解することができた。
あぁ、それでも と恋焦がれて涙を流さずにはいられないのは、やっぱり仕方がないのだけれど。


ヒバリと別れを告げて、まだ二分くらいしか経っていないだろう。
俺はガラス張りの空港の窓から、ヒバリが乗っているかもしれない飛行機が空へと飛んで小さくなっていくのを見届けた。

あぁ もう、寂しい。
あの綺麗な白い指に触れたくなって、ほっそりとした華奢な体に抱き付きたいと 心が叫ぶ。
女のような長い睫毛の下の、綺麗な黒い瞳に 自分の姿が映るのを、見つめて愛しく思いたいと 体が求めて仕方ない。

俺は狂おしいほどに。ヒバリの愛情を欲しがって、瞼を閉じて 浮かんだ実態の無い妄想に涙して
思い出の中を探って、愛しさを募らせて 想い想ってはひとり慰めて、夢が覚めたら寂しくなる。



ヒバリから、メール  届いてねぇかな。
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