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□キスしたいと思うとき
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君に キスしたいと思うとき






どの季節でも、土ぼこりと汗にまみれて せっせと肌を焼いて
真っ白なボールをじっと目で追う君の姿を
放課後の見まわり途中に、ふと教室の窓から見つけたとき。

その、何かに夢中になっている君の顔が どうしようもなく僕は好き。
それでいて、憎らしい。







風も空気も残酷なほど冷える日に
出かけた先の 照明が白く眩しいファミレスや、オレンジの明かりで少しばかり薄暗い喫茶店か
はたまたいつものようにお馴染みの応接室か君の部屋で、君の淹れたコーヒーかお茶でも飲んでいるときに
冷えた両手をあたためるように、あたたかな飲み物の入ったカップを両手で包んで持ってみたり
なかなかあたたまらない指先を、カップに押し当ててみたりしているとき。

その押し当てた指先や手のひらが、カップの熱で赤くなっている様も また愛おしい。







いつだったか、流星群を見に行ったときの
白い息を吐きながら 星空をずっと眺めている君の、片方だけジャンバーのポケットから出された手と
それを握りつないでいる僕の手が
外側の皮膚を凍えさせているかわりに、君と僕の手が重なって繋がっている手のひらの部分が
時折熱く思えるほど熱をもって、あたたかくなっているのを ふと感じたとき。

このぬくもりは君とだけ分かち合えるものなんだと思うと、それはこの世のどれとも比較できないほどに尊く思える。






なにかしらのことがあって
いつもの、苦笑いに似た照れ笑いを君がしたとき。

慌てたような照れかたも好きだけど、一番自然なあの笑い方がくすぐったくて好き。






僕が読書か委員会の仕事をしているときに、何もすることがない君が
じっとこちらを覗きこんでくるのに気づいたとき。

意外と長い睫毛の下の、くるりと大きく丸い
明るめな薄茶色の瞳に映っているのが僕ひとりだというのが このうえなく嬉しく、愛しい。






この5つのいずれも 「待て」のできない僕には

君にキスをせずには居られない瞬間だと言える。





END!

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