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□貴方に、パンジーと勿忘草の花をあげましょう。
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思えば、俺はヒバリに一目惚れというやつをしていたのかもしれない。

一切無駄のない動きは舞うようで、その華奢な体から編み出される強烈な攻撃は 体を切り裂かれるように痛かった。
それを繰り返してあっという間に沢山の敵を潰していく様は 清々しくも思えた。
なにより、その間はヒバリがとても楽しそうだったし 返り血の中を躍っているようでとても綺麗だった。

その時は、まだ好きという感覚が分からなくて もどかしく胸を焦がす思いが鬱陶しくも心地よく感じていた。
特にそれは ヒバリを見たり会ったり思い出したりすると強くなって、野球にさえ集中できなくなった。

それがちゃんと 恋をしているのだと分かったのは、ヒバリに会えなくなった高一の事。
何も言えずに離れてしまった事を凄く後悔して 泣き出したくもなった。
けど、そんな事していてもヒバリに会えるわけじゃないし 泣いたとして、ヒバリはきっと嫌な顔をすると思う。
「弱い奴は嫌いだよ」と。
だから、俺は枕に顔を埋めて 声と気持ちを押し殺すことしかできなかった。

それから何年か経って、懐かしいあの7人が揃った。
丁度高校を卒業した時に、小僧に呼び出された。
そこには笹川先輩も、クローム髑髏も、ランボも居た。そして...
ヒバリも居た。
その時俺は、ヒバリの事を忘れようとした成果のお陰か 少し忘れかけていた。
なのに。
あの時感じた想いがよみがえってきて、どうしようもなく切ないような
それでいてあの、どきりとする 感情が胸にこみ上げてきた。

俺はまた、ヒバリに恋をした。

でも 告白なんて大それた事を、俺ができるわけもなくって
ずっと想いを伝えられずにきた。

それが、だ。

ヒバリが俺をかばって銃に撃たれた直後、両想いだった事を知るなんて。
もっと早く、俺から言えばよかった。想いの丈を、打ち明ければよかった。
悔しいのと切ないのと愛しいのとで、俺の頬はぐしゃぐしゃに濡れてしまった。
けど、ヒバリが笑ってくれたから つられて笑った。
そしたらヒバリが 何故だろう、幸せそうに泣いた。





俺を愛してくれた、最愛の人は 今はもう土の中。
俺の目の前に、埋まっている。
墓石には アルファベットでヒバリの名前。墓はイタリアに作られた。
責めて日本に作ってやりたかったが、本人が書いた遺言書に
「葬式は要らない。遺体はその場に埋めてほしい」と書かれていたのだから 仕方ない。

「また来週、日本から帰って来たら 来るからな」



最期に暖かな笑顔をくれた お前に、愛をこめてパンジーと勿忘草の花を





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