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私の願いで実現した桃ちゃんvsリョーマ。
これが私がちゃんと観る初めてのリョーマの試合。大好きで大好きなリョーマの…。
「きゃああ、桜乃っいたいた!」
「どこどこ?」
「ほらっ学ランでラケット持ってる人!!」
「あれ?リョ、リョーマくん?!」
コートの外から聞こえてくる2人の甲高い可愛いらしい声、その声の方に顔を向けるとやはりあの2人、桜乃と朋ちゃんがいた。
…不意に痛くなる自分の心臓。
────『10年後のリョーマと桜乃って結婚するんだって』
「……っ……」
「えりな」
どんな顔をしていたのかはわからないがリョーマが私の名前を呼べば頭をクシャっと一度撫でた。
……そうだよ,今こうやってリョーマの隣にいれるんだから…
「…なる程…お前が例の“越前リョーマ”か…出る杭は早めに打っとかねぇとな…桃城武2年だ!」
「越前!まじで2年のレギュラーと試合すんのかよ?!」
着替えようとするリョーマに呼び掛ける堀尾くんはやめとけよっとでも言うように慌てている。
そんな堀尾くんに見向きもせず着替えていき脱いだ服は私に預けてきた。
「さ、桜乃知り合いなの?!」
「う、うん…まぁ…」
「いーないーな」
…嗚呼,この2人の声は私の心を締め付ける。
ぎゅうっとリョーマの服を握って身を縮めれば新しい制服の匂いにまじってふわりとリョーマの匂いがした。
3次元にいた頃はこの匂いもこの制服もこの学校の土も学校もみんなの吐息も鼓動も…何も知ることはなかった。
いや…知ってしまったから、苦しいのかもしれない。
「おい桃!ちょっと待てって、だってお前…っ」
「まぁ、いーじゃねぇの!おめぇらが1年からカモッてたの内緒にしてやっからよ」
「でもよう…」
桃ちゃん達が内緒話をしているが、知っているから余り気にしない方向にし今から始まる軽い試合に集中する。
「バァさんから聞いたんだけど…ツイストサーブ打てるんだって?」
「!」
「そーなんッスか?!」
「ツイストサーブ…何だそれ…?」
「ええーっ。一般にみんなが打つ左回転のスライスサーブの逆の回転ですよ!!でも打球はスライスと違ってトップスピン気味に跳ねるんです!!」
「?」
何もわかってない先輩に丁寧に説明してあげる可愛い後輩の堀尾くんをしり目に、コート内で桜乃達から離れてフェンスに寄りかかって見届ける。
勿論リョーマに近いほう。
「まぁ、要するに顔面目掛けて球が跳ね上がってくるわけよ。あー怖い怖い。中学生じゃまずこれが出来る奴はいねーよ…な!!」
「いーから早くやろーよ」
「あいよ」
何も口を出さない、特に出す必要もない。
「フィッチ?」
────やっと始まる…
「スムース」
「残念、ラフだ!サーブはやるよ、こっちのコートを貰う。」
「え?!先にサーブ取らねぇのかよ」
「はやくサーブ見てぇじゃん!!」
「オ、オレ審判やってもいいッスかー?!」
「おう、頼む!」
元から入っていたコートのまま試合が始まろうとし、リョーマは意味ありげに桃ちゃんをじーっと見ていた。
試合の時は邪魔をしないと決めている、黙ってただリョーマを見ていたいから。
「ザ・ベスト・オブ・1セットマッチ越前サービスプレイ!!」
そう堀尾が叫ぶとリョーマはヒュッっとボールを上に投げる。
高鳴る鼓動を隠せないままボールをじっと見つめ目が離せない。
「!」
ドッ
右手のサーブだった、それなのに一瞬で桃のコートに入っていた。
速くて目で追えない。右でこれなら…左は…。そう考えるだけで胸がもっと高鳴った。
「はええ!!いきなりエースとりやがった?!」
「すご〜い!テニスもうまいなんて、応援よ!応援!!」
「う、うん…」
私と同じ様な事を叫ぶ2年と女子たち、確かに生で見るのは速いし凄く迫力があって叫びたくなるのも分からなくもない。
スウッっとリョーマに向かってラケットを向ければ桃ちゃんはスライスサーブはいいから早くツイストサーブを打つように促した。
「やだ」
「むぅっ、生意気な奴だ」
「15-0」
やだっと言いながらも打つのがリョーマ。
ポーンポーンっとボールを何度か跳ねれば桜乃がツイストサーブを打つのを予測した。
来る、リョーマの十八番…
────ツイストサーブ!
バァッン!
リョーマが勢いよくサーブを打てば桃ちゃんの顔面に向かってボールが飛ぶ。
それを桃ちゃんは打ち返そうとしたがラケットが後ろへと吹っ飛んでいった。
…息をのんだ、これがツイストサーブ…。
アニメのようにホントに綺麗に顔面へと飛んでくんだと、目を開いたまま固まり何とも言えない時間が続いた。
「すっげぇ!!あれがツイストか?!」
「あーびっくりした」
「大丈夫?」
「!……コノヤロウ」
「30-0」
カウントが入ればリョーマはまたツイストサーブを打ち、桃ちゃんは前へ出て顔面に来る前、つまり跳ね際(ライジング)を叩こうとするがパワーで押され、リョーマのコートには戻らなかった。
「タイミングだけじゃ返せねぇってことか…おもしれぇ!」
「あの桃城がパワーで押された?」
「タイミングはバッチリだったのにすげぇ威力ってことか…?」
もう1度リョーマはツイストサーブを打つがパワーで押されたままの桃ちゃんは1ゲームを落とすことになった。
「嘘だろ?!桃城は団体戦のメンバーだぞ?!あんな1年に?!まじでどうなってんだ…」
「あの桃が押されるはず…」
「あ…?!」
2ゲーム目になり、やっとギリギリツイストサーブを返せるようになった桃ちゃんは、次になれば完璧にサーブを返すがリョーマはネットにつき軽々と返し、ギリギリながらも桃ちゃんがフォアハンドで返すもののドロップボレーで決めてしまった。
リョーマが左手にラケットを持ち直せばはっとする。
そうだ、左利き…
「ちょっとタンマ!!やーめた、もういいや」
「ええー?!」
「おい桃!どうしたんだ突然!!」
「この辺で勘弁しといてやるよ!!」
こうして初めて生で見たリョーマの試合は終わった。
生試合
(カッコイいとかそんな言葉すら出ないくらい感動した)