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桃ちゃんとの試合の後、体の熱が下がらないまま家に帰れば倫子さんがご飯を作って待っていてくれた。

今日から学校だったからお祝いでリョーマの好きなものばかり用意されていて、ザ・和食となっていた。

私に悪いと思ったらしく「明日はえりなの好きなメニューにしようね」とふふっと笑って言ってくれて笑い返す。目線をテーブルに戻せばリョーマは席に着いて今か今かとご飯を待っているところだった。


「早く食べよーよ」

「はいはい、食べようね」

「うん」


余程お腹を空かせているのか少し膨れっ面で1人座って待っているが先に食べようとはせず、日本の風習に習って育てられている事がよくわかる。


「えりな、何笑ってるの」

「ごめん、可愛いなーって」

「…可愛いなんて言われても嬉しくない」

「中学生は可愛いの」

「えりなも中学生でしょ」

「私も中学生だから中学生として可愛いよ?ね、おじさま?」

「おう!えりなちゃんも菜々子ちゃんも可愛いぞぉ」

「親父!変な目で見んなよ!」

「うるせえ、ちんちくりん」

「にゃろう…」


クスっと笑えばより不機嫌になったリョーマに話し掛けられ、少しからかえば収拾つかなくなるほどになってしまうが、最後は笑いに変えて、みんな席に座ればそれぞれ食べ始めた。

倫子さんが作る料理は薄くなく濃くなく丁度良い感じでとても美味しい。

教わりたいなぁ…リョーマに茶碗蒸し作ってあげたい…。美味しいって言ってくれるかな?

今日みたいなカッコイいリョーマを生で見れるなんて、本当に幸せ。


「ねぇ、ねぇってば…えりな聞いてる?」

「へ?」

「おーっと、何だぁ?えりなちゃん登校初日から惚れた男でも出来たか?」

「ちょ、おじさまっ!違うよっ」


好きな人はいますー!あなたの息子さんですー!

そんなこと言えるはずもなく、慌てて否定をする。それより隣に座ってるリョーマが吃驚するくらい顔を近付けて来ていたことを思い出して今更顔を赤くすれば、おじさまはまたニヤリと笑った。


「はっはーん、その反応…いるな?」

「いないってばー!」

「照れるな照れるな!今度会わせてくれよ〜」

「もう、だからいn───」


ガタンっと大きな音がし、ビクッと肩を震わせ音のした方を見れば、リョーマが箸を乱暴に置いた音だとやっと理解する。

そして大きな目は真っ直ぐとおじさまに向けられていて、睨んでいる。


「やめろよ、親父」

「…リョー…マ…」

「んだよリョーマ…」

「えりな、いないって言ってるだろ」

「リョーマ、お前…えりなちゃんのこと好きなのか?」

「…もしそうだったら?」

「無理無理、えりなちゃん可愛いからなぁ。お前なんか全然ダメだな!俺くらいじゃねぇと」

「……親父のどこがいいんだよ」

「おじさま、寧ろ私には勿体無い男の子だよ。リョーマは強くてカッコ良くて…そうそう!今日なんて2年レギュラーとの試合で優勢だったの!」


リョーマの事が好きだと言いそうになったからその前に話を変えようと思い、今日の話にした。

そうすれば菜々子さんが食いついてくれて…。良い人だ。空気を読める大人の女の人って感じがする。


「まぁ、リョーマさん試合したの?」

「まぁね…」

「どうだったのかしら」

「……まだまだだね」








その夜
(生きる道)
(わからないけれど、一緒にいたい)

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