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ご飯も食べ終わり、お風呂に入って寝る準備をすれば、2階へと上がっていく。階段を上がってすぐそばの部屋がリョーマの部屋で、その隣が私の部屋。
リョーマの隣の部屋に私の部屋がある、薄い壁の隔たりしかない。そのことを考えるたびに、嬉しく思う反面、辛いと思う。
いつ、私はこの素敵な世界から去ってしまうんだろう。
何故、私はこの素敵な世界に来てしまったのだろう。
3次元と2次元の絶対的な“壁”があった。
けどそれは今も、2次元に来てもそれはある。
リョーマの部屋と私の部屋の間にある壁のように。
何時かは帰るべき場所に帰る日が来るかもしれない、元々3次元の私、2次元のリョーマ、決して混じり合う事のない世界で生きながら出会ってしまった。3次元の頃はリョーマは2次元のキャラなのだと言って踏ん切りがついていた。
けれど同じ空間で過ごして、本気になってしまいそうになる。
帰ってしまったら、その気持ちはどこに行くの?
好きになってはいけない。
…辛い、本当に。
「…えりな?」
「リョーマ…」
「何で…泣いて…」
リョーマの部屋の前で止まっていることに気付いていたのか、部屋からリョーマが出てくれば驚いた様子でじっと見ている。
「あのさ、人の部屋の前で泣かないでくれる?」
「…っ…ご、めん…」
「…はぁ、入って」
「ちょ、リョー、マっ…!」
1つ溜め息をつかれれば、リョーマは私の腕を引いて、自分の部屋を入れればドアを閉めて、私をベッドに座らせた。
このベッド…私がこっちの世界に来た時寝てたベッド…。
「また考え事?」
「あっ…」
ベッドをじっと見つめていれば、リョーマはグイっと私の頬を両手で挟んで顔を上げさせ、顔を近付けて来る。
吐息が…かかる…
「リョー、マ…」
「ん…?」
優しい声は私に向けられてる、大きな目は私を真っ直ぐ見てる、暖かいラケットを持つ手は今は私に触れてる。
好きが…溢れる。
止まらない。
「…っ…リョーマ…」
頬にある手を上から握って、頬に擦り寄せる、甘えるように。
「…えりな、どうした?」
「……リョーマ…、」
「俺は…、ここにいるから…泣かないでよ…」
嗚呼、残酷だ。
離れたくない…ここに大好きなキミがいるから。
「…好き…リョーマっ…」
「…えりな…」
ぎゅうっとしがみつくように前にいるリョーマに抱き付く。
リョーマの匂い、全身に伝わるリョーマの温もり。
全部、全部…3次元にいれば知ることもなかった。
大好き、な…人。
「…えりな、…」
「…んっ…」
背はえりなと変わらないのに、広く感じる胸、大きく感じる手、逞しく感じる腕。
確かにある、リョーマの鼓動。
ドクンドクンと波打つ音に安心すら覚えれば、リョーマが離さないようにと抱きしめていてくれることに気がつく。
……このまま、ずっと…
「…えりな、俺はどこにもいかないから」
「うん…」
「だから、」
「…う、ん…」
「……て、れる……?」
何…?
リョーマ…今…何て言った、の……
「…リョー、マ…」
「…まったく…」
確かにある温もり
(眠り姫なの?えりなって)