NEXT STORY

□10
1ページ/1ページ







次の日、普通に起きて、支度して、学校に行って授業を受ける。

リョーマが平然としてるのは、やっぱりアメリカ育ちが影響しているのだろうか。

抱きしめてもらうのはドキドキしない、寧ろ安らぐし、私の専用充電器なようなもの。

こういう事って、桜乃たちにもするのだろうか、そう思うと、ズキンと胸が痛くなった。

そんなどうでもいいことを考えている内に、放課後となり、同じクラスである英二と周助とともにコートへ行く。


「あ、えりな」

「リョーマ、早いね」

「まぁね」


更衣室から出て来たリョーマに遭遇すると何時も被っている帽子を少し深めに被った。

ばったり会うっていう急な展開からか、少し驚いたんだろう。

それが恥ずかしいのだと思う。


「今からマラソンだよね、頑張ってね。特に堀尾くんたち、死なないように。」

「俺、走るのは得意なんッスよ!」

「えー?本当にー?それは楽しみだな、期待してるから、走ってこーい。」


あまりにも得意気に堀尾くんが話すものだから、少しからかえば1年をグラウンドへと追いやり、私はレギュラーとリョーマの分のドリンクを作りに行った。

全員の分を作り終わったときに荒い息がすぐそこで聞こえ、顔を出すと1年が今にも死にそうな顔でマラソンを終えていた。

うっわー、マラソンの後にあんな顔してる人初めて見たんですけど。


「リョーマ!」

「っと…」


まだまだ余裕そうなリョーマのもとへ行けばこっそりドリンクとタオルを渡す。


「いいの?えりなってレギュラー専属なんでしょ?」

「リョーマは特別」

「…サンキュ」

「どーいたしまして」


リョーマがドリンクを飲んでいる間、今にも死にそうな堀尾くんのもとへ行く。

さっきまで得意なんだと話していたお調子者はどこに行ったんだか…


「大丈夫?」

「だ、大丈夫…ッス…はぁ…」

「なら、よかった。今から素振り500回!」

「素振り500回だって?!」

「ウソー!まだ仮入部なのにー!」

「仮でも入部は入部!水分補給したらラケット持ってまたここに集合ねー!」

「はい!」


そういえば…この後リョーマのラケットが3本とも荒井に…

うーん、今日も面白そうだな。


「64!65!66!」


私はレギュラー専属マネージャーなのでずっと1年を見ているわけにもいかず、レギュラーの練習している隣で、少し様子を見ていれば、素振りをしている1年の近くできょろきょろしているリョーマを見つけた。

やっぱり、荒井にラケットを隠されるのは今日なのね。


「越前、お前ラケット忘れたのかよ?」

「…いや…」

「ラケットを持たずに部活に出るたぁ、いい度胸じゃねぇか!部長副部長がいないからってサボってんのか」


それはマネージャーである私は知っていて見逃していると?ほぉ、無能だと?

いい度胸してるのはお前だよ、ヘアバン野郎。


「えりな、抑えて!」

「英二…」

「そ、それより…また絡んでるの面白そうだね」


止めに入ってくる英二。

何もしないよ、これからのお楽しみタイムだっていうのに。


「そんなに自信満々なら今2年は試合形式の練習やってっから相手をしてやってもいいんだが、ラケットがないんじゃなー。おっと、これならあったぜ!!」


わざとらしい演技をしながらボロボロのラケットをリョーマに向かって投げつける。

まず、私の相手してくれよ。喧嘩の。


「あ、それは!部室にあった年代物のラケット!!」

「うわーっ!ガッドゆるゆる、フレームがたがた!こんなの使えないよ!!」


ラケットを見た堀尾くんがラケットがどこにあったのかを言い、どういうものなのかカチローが説明をした。

本当に、素人から見てもわかるくらいのボロボロ具合、使えないのがよくわかる。


「どーした、相手してくんねぇの?期待の新人くんよ。」

「うっひょー、無茶苦茶言ってんなー。」


にやにやしながらリョーマに告げる荒井を見ている英二は後ろから抱き付いて来て、心なしか少し楽しそうに2人を見ている。


「どうする、とめるか?」

「もうすぐ部長たちも帰ってくるし、見つかったらどやされるって!」

「うーん…」


いつの間にかと英二の周りには手塚くん大石くんを除くレギュラー陣がいて、2人を止めるか迷っているようだ。

2人っていうより、荒井が主だろうけど。

荒井の気持ちは1000年経とうと理解出来ないね、絶対


「1年のお前にはそのラケットがお似合いだぜ。これに懲りて二度と出しゃばろうなんて思うんじゃねぇぞ、そうすれば大事なラケット3本とも出てくるかもな!」

「ラケット?何のことだにゃあ?」

「荒井が悪ガキってことだよ、小学生か。」

「ふふ、やっぱりえりなって面白い」

「あー…なるへそ、そういうこと」


本当にくだらないと思う。

ラケット3本持ってるのって生意気とかじゃなくて「経験者かな?」とか「やる気あるんだな」で終わると思うんだ。だって中学入学早々部活のために3本もラケット買ってくれる親なんていないと思う。

リョーマが黙ってボロボロのラケットを持ったままコートに入って行った。

やる気なんだね、リョーマ!


「いるよね、弱いからって小細工するやつ」

「おっと、悟ってるリョーマさん、バージョン2ですね!」

「ちょっとえりな黙って。」

「なんだよ、隠したとでも言いたいのか」

「おこらりた」

「荒井、嘘つくの下手だね。荒井だけにやることも荒い。」

「英二に座布団1枚!」

「やったー!」


そんなこと言ってる間にリョーマはコートに入って構えたいた。

ふぁ…かっこいい。


「いーよ、やろうか」


リョーマってコートの中に入ると変わるよね、きりっとしてて、なんか…遠い人みたい。

元々遠い人なんだけどさ!


「もうちょっと見てみることにした。」

「そういうと思った。」


不二がそう言うとレギュラーも含めてリョーマの行く末を見守ることになった。

あのボロボロのラケットと何時ものとでどう違うのか、楽しみなんだよね。


「よーし、それならわかった。こてんぱんに叩きのめしてやるよ」


荒井もコートに入って構えれば荒井からサーブを打つ。

それを何時ものように打ち返すが、ペシっという何ともヘンテコな音を出してネットとなってしまう。


「おらおらどうしたぁ!」


ラケットのガットに触れればビヨーンとひっぱって見せるリョーマ。

あんなにゆるゆるなら、そりゃ何時ものように打ってもコントロール利かないよね。

また荒井がサーブを打つも、今度は荒井の後ろのフェンスに当たるくらいのホームランボールを返してしまう。



「だめだー!全然コントロールきかないじゃん!!」

「まともに打っても無駄だろうな」

「そだね」


堀尾くんが慌てているのに対してレギュラーは冷静に場を見極めている。

やっぱり経験の差なのか、今はリョーマに何の関心もないのか。

いや、乾くんはちゃっかりしっかりデータを録っているしそうでもないのか…

それはただ念のためとかそういうのかもね。


「うーん、あんなラケットじゃまずスピンはかからないよね」

「周助、それわかんない」

「そのうちわかるよ」

「だといいね」


ドキュっ!

そんなさっきとは違う音が聞こえてコートを見れば荒井の足元にボールが転がっていた。

打ち返したんだ、凄い。


「おー体全体で回転させてスピンかけたよ、やるー!」

「弘法は筆を選ばずってやつかな」

「来るな…あいつ」

「そだね」


的確に返していくリョーマ。

自分で遅いと言っているが、確かに遅い。

何時ものラケットとこんなにも違うなんて…

荒井がポケットからボールを落としてしまったのをみては息をのんだ。

リョーマ…


「そのボール邪魔だね」


そう言うとサーブで荒井の下にあったボールに当て、はじき出した。


「ああああリョーマかっこいい〜〜」

「…はぁ…えりなってば」


リョーマに呆れられながらも、応援し、リョーマはそれに応えてゲームを進めていく、勿論優勢。

今日も幸せです。





波紋と強さ
(あ、手塚くんが窓から見てる)
(仕事終わったし帰ろ)
((全員グラウンド走ってこいって手塚の命令だ、ってえりなちゃんは?))
((んーこれは帰ったね))
((えりな…覚えとけ))

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ