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何だか重いものが乗っている気がして、幽霊か?!もしかして金縛り?!なんて少し焦る朝。少しずつ目を開ける事が出来たのでとりあえず霊的なそういう現象では無いことにほっと一息をつく。そうしてるうちにペロッと頬を舐められたのでビクッと肩を震わせ、恐る恐る舐められた方向に顔を向ければ、カルピンなヒマラヤンが目の前にいた。
「?!?!」
一瞬叫びそうになったが頑張って飲み込んでカルピンなヒマラヤンを撫でる。ヒマラヤンって可愛いよなあ。なんて場違いなことを考える方向に無理矢理変えた瞬間、ガチャリとドアの開く音がした。
このタイミングで来るか、一難去ってまた一難とはこのことだと知る14歳。誰だろう…とりあえず怖い人じゃなかったら何でもいいです、この際…。そう思いながら体を起こしてドアの方に顔を向ける。
「あ、目覚めたんだ?」
「え…」
怖い人じゃなかったら何でもいいやと思いながらもカルピンなヒマラヤンがいるし、リョーマだったらいいなーなんて思っていた。確かに思ってはいた。だから余計に驚いたのだ。猫みたいに目のでかいリョーマ似の男の子が入ってきたことに。
驚きや何やらでとりあえずカルピンなヒマラヤンを抱き締めた。と言うよりぎゅーっと締め付けた。
「ほあ゙ら゙〜」
「カルピン苦しがってるんだけど…」
「…ぁ…」
少し腕を緩めてカルピンなヒマラヤンの頭を撫でてやるとカルピンなヒマラヤンは気持ち良さそうにゴロゴロと声を出した。
今…アニメと同じあの声でこのカルピンなヒマラヤンをカルピンって言った?
他に苦しがってる生き物はいないし。ホントにホントに…この猫はカルピンでこの男の子はリョーマ?
信じられない…
「でアンタ誰?」
「……………」
「ねぇ、聞いてる?」
「………」
いやでも、ありえないありえない。
こういうのは夢っていうオチが王道だよ、だってさメールが来てさそれを返信しただけ。あの時からもう夢の中でリョーマを求めすぎてこんな幸せすぎる夢を見てるんだよ、きっとそう、そうとしか考えられない!
だってリョーマは『テニスの王子様』って言う漫画の主人公、二次元、作者たちがいなければ存在も叶わない人物。
これが夢じゃないとなれば…
「ねぇってば!」
ガシッ…
「え………」
顔と顔との距離が10cmくらいしかない今のこの状況。
リョーマ似の男の子が私の肩に手を置いてじぃっとこちらを見つめてくる、大きな綺麗な目には私が写っていて、この子はきっと凄く真っ直ぐで誠実な子なのだろうと思えた。
目を見ただけでこれほど相手をわかった気でいれたのは初めてで、初対面なのについついじっと目を見つめてしまって返事が出来なかった。
「アンタの名前、聞いてるんだけど。話せないの?」
ずっと口を開かない私を話せない子なのかと思ったらしい。リョーマ似の子はそれだと可哀想なことをしたと思ったようで少し申し訳無さそうな顔をした。優しい子だなぁ。
「…夢咲えりな。14歳…」
「何だ話せるんじゃん。えりな、ね。」
安心したのか深く溜め息をすれば軽く笑ってみせてくれて余計大好きなリョーマに見える。
…もしかしてこれはドッキリ?
某ミュージカルのドッキリで実は次のリョーマ役でぇーす、騙されるか実証してみましたぁー的な。やばい、それだとリョーマだと思い込んだら私かなり痛い子だ…。
冷静になって物事を見極めよう
「あなたは…?」
「俺?俺は越前リョーマ。来月から中1。」
「…え?!」
「何?」
「何でもないよ…」
来月から中1ってどういうこと?今は夏じゃないの?
だって私は夏に宿題を終わらせて手持ち無沙汰になっていたじゃん、…どっきりにしては大規模すぎる。季節まで変える必要もない…やっぱりこれって…トリップ?
「あっそ、それでアンタ…何で落ちてきたわけ?」
「…お、落ちて来た…?!」
「うん、結構高いとこからさ。白い羽が生えてそれがクッションになったみたいだけど。その後放っておけないし連れて帰ってきた」
「…そうなんだ、助けてくれてありがとう。…でも…何で落ちたのかわからないんだ。」
何これ怖い。
よく思い出してみようじゃないか。テニスの王子様が内容の変なメールのアンケに答えた→地面がなくなって落下→息が出来なくて気絶…ここまでは覚えてる。だけどその続きが…羽が生えて、それがクッションになって無事着地…と…。
何これ怖い、大事だからもう一回
何これ怖い。
「母さんがそれってトリップじゃないって喜んでた。」
リョーマのお母さんって、倫子さん?
倫子さんってトリップとかそういうの知ってるんだ。それどころか、喜んでるってことは知ってるどころか好きなんじゃ…。凄いな…感心してる場合じゃないけど。
私はトリップしたらしい、でもどうしてトリップできたの?
「トリップ…なのかな…」
「…母さんがトリップなら家に住めって。」
「え、いいの?」
「いいんじゃない?」
「じゃあ…よろしくお願いします…。」
「ん」
これが俗に言うトリップなら住む家もお金もない、有り難いお話だし、大好きなリョーマと一緒に住めるんだから断る理由もない。
前の世界では何も楽しいことがなかった。
友達はいたが、毎日普通に同じ様な日々ははっきり言って暇だった。
リョーマがいる世界は毎日が劇的で楽しそうにテニスしてるみんながいて、世界は違えど世界観は同じ様なモノなのに私の世界ではたくさんのモノが欠落していた。どうしてこんなにも違うのかリョーマの近くだと毎日が劇的になるのか…そう考えていた。
「えりな」
「へ?」
「呼び方、えりなでいいでしょ?」
「う、うん!もちろん!」
「ぷっ…テンション上がりすぎ」
───私はずっとこの笑顔が見たかった
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