青春スタンダード
□1話
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「…だっ、第二ボタン頂けませんかっ」
【1話 忘れるなんて、一生できない。】
たった一度の、高校時代。
忘れるなんて、一生できない。
春、その日県下の高校では一斉に卒業式が行われていた。
その中の、ごく普通の県立高校で。
ある女子高生が一人の男子高生に告白をしていた。
「俺のでいいのか?」
「せ、先輩のが、いいんです……。」
「こんなものでよければ、どうぞ。」
「ほっ、ほ、本当ですかっ……!?」
顔を真っ赤にさせている女子高生の顔が更に赤く染まる。
彼女の名前も男子高生は分からなかったが、別に明日から必要なくなる制服のボタンくらいなくなっても構わないと、彼女へと差し出した。
「ありがとう、ございます!」
「構わないさ。それじゃあ……」
「…えっ、あ………」
嬉しそうにボタンを握り締める彼女は、
まだ何か言いたそうにしていたが、男子高生はそれに気付かずその場を立ち去ってしまった。
取り残された女子高生の顔から赤みが消える。
「……くれた、だけ?」
一瞬見えた期待は、泡となった。
いわゆる、失恋というやつだった。