Novel

□サマー・レイン(完結)
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どうしてこの本は、こうまでしてあたしの心を重たくさせるんだろう。

人を愛する。
それは、毎日食事を摂り、排泄をし、呼吸をすることと何ら変わらない。

人間にとって、男とか女とかの性別も、年齢さえも全く関係なく、必要不可欠で、それでいて、時々、どうしようもなく不必要だと感じてしまう。

そんなアンバランスで、危うく、脆く、だけどやっぱりどうしても必要な存在。

あたしはそう思っている。

なのに、この本はどうだろう。

いちいち、そういう愛することがなんであるかを、実に、こと細やかに説明し、そして結論づけてしまう。

『終わらないラブストーリーを君に』

あたしはその本を綴じると、ため息をひとつついて、木製のブックシェルフの、一番奥にしまいこんだ。

反対側のベットからは、静かな寝息が、穏やかな波のように繰り返されている。

彼が生きているという、頼りない証。

「おはよう、一成。もう、朝よ」

あたしはベットサイドに腰をかけ、やっぱり頼りなく笑うと、彼の額に軽くキスをした。

毎朝の儀式は、実に静かで気持ちを穏やかにしてくれる。
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