微かに瞬く星屑
□<新妻?>
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久しぶりに朝早く起きたら隣に臨也がいなかった。
……そりゃ当たり前、な、はずだが、
まあほら俺達は当たり前な存在じゃねえわけでそんな腐ってる俺達だから朝臨也が隣にいるのが当たり前なわけで、
とにかく臨也がいなかった。
その事実に少し不安を覚える自分に背筋が逆立つ。体は鳥肌も総動員させたいらしいが時間の無駄だ、ほっとくことにした。
ここが同棲時に売り払っちまった俺の家ならまだしも臨也の家なのに何故臨也がいないのだろうか。
……探そうと思い立ったのはいいが、臨也の家は無駄に広く何処から探せばいいのか分からねえ。適当に服をはおって立ち尽くしていたら、何処かから……うまそうな匂いが。
嗅覚を頼りに臨也の居場所を探す。
いた。台所に。
……エプロン付けた臨也が。
……ん?幻覚か?
目を擦っても幻覚臨也(仮定)が消えないので、
……見なかったことにしよう。
即座にUターン、したのに、
「シズちゃんおはよー」
嫌でも引き戻された、現実に。
否、これは夢だ。現実ではない。
「何言ってんの?現実だよー」
「人の思考を勝手に……って幻覚じゃないのか?」
改めて驚いた。なんか引いた。血の気も引いた。
「そのエプロンどこで買った」
「東急ハンズ」
「そこは聞いてない」
「じゃあ何さ」
「お前そのふりふりのエプロン持ってレジ並んだのか」
「そうだけど」
「……マジかよ」
いや、だってピンクの生地に白レースとリボンのふりふりエプロンだぞ?
……なんか臨也、妙に似合ってるような。
「なんでお前は変なコスプレが似合うんだ」
「俺に不可能はない!」
どこかで聞いた様なフレーズと共にそのままおたまを持った手で決めポーズ。
この言葉言った奴、まさか女装趣味の馬鹿野郎の言い訳に使われるとは夢にも思わなかった事だろう。
そして女装がそこらの女よりも似合ってしまう臨也はもっと始末に負えない。
「何やってんだ?」
「ドキドキ♡愛妻弁当!エプロンで夫を悩殺 しちゃえ☆大作戦」
「………」
「そこ突っ込もうよ」
「お前ボケてたのか」
「いや?」
「……」
「なんか無言短くなってるし、突っ込めよ」
「どうやって?」
「『俺は悩殺なんかされてねえぞ(照)』と か」
「おい」
「すみませんでした心の底から反省してます」
「………」
「………」
「そういや弁当っつったか?」
「俺のエプロンのかわいさとかコメントはないわけね」
「そういや弁当っつったか?」
「………シズちゃんにお弁当」
そう言って臨也はこじんまりとした弁当箱を臨也は差し出した。
家庭感があふれでてる弁当だった。
卵焼き(砂糖入ってそうだな)にウインナー(たこさん)にご飯(のりたま)に……仕上げにりんご(うさぎ)。
にっ、にあわねえええええ!
か、かわいいいいいいいいい!(臨也が)
いちいちりんごとかかわいくカットしたのだろうか。
ウインナーはたこにするためにわざわざ赤いウインナーを買ったのだろうか。
この弁当作るためにこんな時間(現在5時)に起きたのだろうか。
臨也の顔をじっと見つめたら
顔が赤かった。
や、やべえ、かわいいぞ臨也、かわいすぎるんだがどうしようやべえ。
「う、うまそうだな」
なんかこっちも緊張してきた。
「ホント!?」
顔あげて嬉しそうな顔すんな小さくガッツポーズすんな頬を赤く染めるな。
そして俺も可愛いとか思うな食っちゃいてえとか思うなエプロン似合うとかまた着て欲しいとか思うな。
「………」
「………」
なんだこのぴんく色の雰囲気、新婚かよ。
「し、しずちゃ」
「また作れよな」
「うん」
この日から臨也は毎日静雄の弁当を作っているのでありました。