SNOW*ROSE

□第2章
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いつかはこの世界は消えていくって分かっているのに、それをとめようとするのはナゼだろう?
わたしはきっと生きていないし、関心もないのに。
それはそう。
あのときの約束がわたしの本能を揺さぶっているからなんだ。


今からちょうど100年前。
世界は白雪が生まれたことによって、3度目の崩壊の危機に陥っていた。

「こんな状態で前に進むなんて無理よ!」

吹き荒れる吹雪の中で必死に前へ進もうとしている彼女の名は、白蘭(はくらん)。
白く輝く髪をなびかせながら、隣で同じように進もうとしているものに、叫んでいた。

「無理って言ったって、ここまできたんだからやるしかないじゃん!」

彼女の名は凛菜(りんな)。
白雪の運命を背負っているわけではないが、白蘭が親友ということもあり、世界の崩壊を止めることに協力していた。

「でも、これじゃあ前が見えないわ!!」
「見えなくても、前に進むんだってば!」

白蘭に付き添っていたはずの神とははぐれてしまった。
2人は、世界の崩壊の原因となっている人間のすぐ近くまで来ていた。
けれど、なかなか見つけ出すことが出来ない。

「どこにいるか分からないとダメじゃない!」
「でも進むの!」

ザクザクと雪を掻き分けながら進んでいくと、1人の男の姿が見えた。

「いたわ!!」
「ひぃ!」

男も白蘭が追いつきそうなことに気がついた。

「逃がさないってば!」
凛菜が男の足を逃げないようにつかむ。

「は、はなせ!」
「はなさないってば!」

ジタバタと暴れる男に蹴られないように、凛菜も必死でかわす。

「白蘭はやく!」
「わ、分かったわ」

世界の崩壊を止める、たった1つの方法。
それは、白雪の運命を背負ったものが、神から授けられる真実の刀で、禁忌を犯した人間を殺すこと。
それ以外に方法は・・・ない。

「人を殺すことは好きではないけれど、あなたはそれほどの禁忌を犯したわ。そんな人に情けはかけない!!」

白蘭が、真実の刀を男の心臓をめがけて突き刺す。

「う・・・あぁぁぁぁぁ!!!」

男が断末魔をあげて、ゆっくりと倒れていく。
血まみれになった刀を白蘭は捨てた。

「白蘭・・・」
「どうして、人は世界の崩壊が起こることを分かっていても禁忌を犯してしまうんでしょうね」
「それは・・・誰にも分からないことだけど」

白蘭が涙を流しながら呟いた。

「止める方法も神は知っているのにね」
「白蘭・・・」

白蘭も、凛菜も、白雪の運命を背負ったものに伝言を残していくだけの神が大嫌いだった。
なのに神は言うのだ。
−白雪の運命を背負ったものは存在してはいけない−と。

「きっとまた、世界は崩壊の危機に陥るわ」
「そのときは・・・−」


そのときは凛菜の生まれ変わりが、白蘭の生まれ変わりを助けてあげる。
この約束は100年後になって、守られる。
ただ、白雪が覚えていないだけで。
咲菜の心の中にはずっと存在し続けていたのだ。
今も。そしてこれからも。
変わらぬ約束として。
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